解決事例
更新日2020年3月3日

異議申し立てにより、後遺障害非該当から14級9号を獲得した事例

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Mさん

受傷部位首(頚椎捻挫)、腰(腰椎捻挫)
等級併合14級
ご依頼後取得した金額
240万円

内訳
損害項目 弁護士によるサポート結果
後遺障害逸失利益 52万円(裁判基準:喪失期間5年、喪失率5%)
後遺障害慰謝料 110万円(裁判基準)
傷害慰謝料 78万円
結果 240万円(自賠責回収分含む)

 

状況

解説図Mさんは、交差点で赤信号のため停車していたところ、後方から走行してきた車に追突される交通事故に遭いました。

Mさんは、衝突の衝撃により頸椎捻挫、腰椎捻挫と診断されました。

Mさんは、治療のために整形外科に週4~5回程度通院し、投薬治療とリハビリによる治療を継続しました。

交通事故から半年を経過した頃に、保険会社から症状固定と言われ、治療費を打ち切られました。

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症状固定について

Mさんは、腰部と頸部の痛みは残存していたため、自ら治療費を負担して治療を継続しましたが、このまま治療して痛みが消えるのか、適切な補償をしてもらえるのか不安になり、弁護士に相談に来られました。

 

弁護士の対応

解説図弁護士は、Mさんから詳細に事情を聴取したところ、治療の効果はないわけではなく、リハビリや服薬をすることで症状が徐々に軽減している実感はあるとのことだったので、治療は継続してもらい、並行して後遺障害等級認定申請の準備を進めました。

後遺障害の申請をしたところ、結果は非該当でしたので、Mさんと異議申し立てをするか打ち合わせを行いました。

Mさんは、その当時においても頸部・腰部の痛みは強く、病院にも週4日程度通院されていました。

そこで、弁護士はMさんが適切な補償を受けるべく異議申し立てをすることを勧めました。

異議申し立てにあたっては、これまでのMさんのカルテを全て取り寄せ、診断書や診療報酬明細と照らし合わせながら主張を組み立てました。

また、Mさんの仕事・生活面での支障を認定者に具体的に伝えるために、Mさんの仕事・生活面での支障を記載した陳述書を作成しました。

これらの書類をまとめて、異議申し立てをしたところ、腰部、頸部ともに後遺障害等級14級9号が認められ、併合14級の認定を受けることができました。

弁護士は、この認定に基づき、Mさんの損害額を算定し、賠償金の交渉を開始しました。

Mさんは、自営業者であったため逸失利益の基礎収入の算定に争いがありましたが、最終的には確定申告に基づく適切な損害額で合意することができ、後遺障害慰謝料についても裁判基準での解決をすることができました。

 

弁護士のアドバイス

▪️異議申立てについて

後遺障害の結果に納得がいかない場合には、異議申立を行うことができます。

異議申立とは、簡単に言えば、再度後遺障害の審査をやり直すよう申し立てるものです。

異議申立は、何度でも行うことができるのですが、同じ証拠に基づき主張をしても一度下された認定を覆すことはできません。

後遺障害が残っていることを示す新しい証拠を提出したうえで、後遺障害が残っていることを説得的に説明しなければなりません。

本件では、Mさんは、相手保険会社から治療費を打ち切りにあった後も、治療を継続されていました。

こうした事情は、自費で通院するほど痛みが残っていると評価できるため、異議申立をするにあたって、有利な証拠の一つとなります(もちろん痛みがないのに治療を継続することは意味がありません)。

また、後遺障害は、労働能力を喪失していることが前提となるため、実際に仕事上の支障が生じていることを説明することも大切であると考えています。

そこで、本件ではMさんの症状や日常生活上の支障を記載した陳述書も作成して提出しています。

こうした新たな資料を踏まえた主張の結果、当初の後遺障害認定を覆すことができました。

▪️自営業者の逸失利益

後遺障害の逸失利益は、「 年収 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間 」で計算します。

自営業者の年収は、基本的に確定申告の所得によって計算されます。

節税のために所得を抑えているような場合でも確定申告の所得金額で計算するのが原則です。

確定申告上の所得以上の収入があることを証明することができれば、その証明された年収をベースに逸失利益を計算することができます。

但し、これは容易なことではありません。

業務上の使用している帳簿などの客観的な資料などから証明しなければならず、裁判所も相当に厳しく判断しています。

 

 


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