交通事故における慰謝料の算定方法【弁護士が解説】

掲載日:2015年5月18日|最終更新日:2019年8月22日

 

慰謝料とは交通事故により被った精神的苦痛に対する金銭賠償のことです。

交通事故の慰謝料には、傷害慰謝料・後遺症慰謝料(後遺障害慰謝料)・死亡慰謝料が認められます。

人の性格や価値観によって、交通事故によって受ける精神的苦痛は変わってきます。

しかし、一つの一つの交通事故について、個別具体的に慰謝料金額を決定するには非常に時間がかかります。

また、金額に差が出すぎると不公平な結果になることもあり得ます。

したがって、慰謝料の金額は、治療期間や後遺障害の程度、被害者の立場などによってある程度形式化されています。

以下では、慰謝料の基準を説明した上で、傷害慰謝料・後遺症慰謝料(後遺障害慰謝料)・死亡慰謝料について、それぞれ解説します。

 

慰謝料の基準

慰謝料の基準日には、自賠責基準・任意保険会社基準・裁判基準(弁護士基準)の3つの基準があります。

自賠責基準

電卓自賠責基準とは、自賠責保険が、賠償金を計算する場合の基準です。

自賠責保険は、強制加入の保険であり、加入せずに運転すると刑事罰が科されます(1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります)。

加害者である運転手が無保険でしかもお金がない場合には、被害者は全く補償を受けることができなくなる可能性があるため、被害者が最低限の補償を受けることができるよう自賠責保険が強制加入保険として創設されたのです。

こうした経緯で自賠責保険は創設されたので、他の2つの基準と比べて賠償金額の水準は低額になっています(最低限の補償という意味合いです)。

 

任意保険会社の基準

任意保険会社の基準は、その名のとおり、任意保険会社が内部的に定めている賠償の水準です。

各保険会社が、被害者に対して賠償の提示を行う際に使用している水準で、外部に明確に公表はされていません。

被害者に対して、書面で賠償の提示が出された場合に、「弊社基準」といった記載がされることがありますが、それが任意保険会社の基準ということになります。

ただ、その内容をみると自賠責保険の基準で計算されているような場合もあります。

示談交渉は、あくまで交渉なので、最初の賠償提示では任意保険会社の基準を下回る提示がなされることもあります。

 

裁判基準(弁護士基準)

解説する男性のイメージイラスト裁判基準とは、交通事故によって受けた損害について、訴訟提起して裁判所に審理してもらった場合に参考とされる基準です。

弁護士が、示談交渉に介入した場合には、基本的に裁判基準を前提として交渉を進めることから、弁護士基準という言い方をすることもあります。

訴訟提起をすることは多大な時間と労力を要することになりますので、裁判基準は、賠償基準の中で最も高い賠償水準となっています。

 

 

傷害慰謝料

傷害慰謝料とは、交通事故により負傷したことで入院や通院をしたことに対する慰謝料です。

したがって、傷害慰謝料の金額は、入院期間、通院期間をもとに算定されることになります。

任意保険会社の基準は、明確ではないため、以下では、自賠責基準と裁判基準を説明します。

 

自賠責基準での算定

自賠責基準での慰謝料の算定方法を説明します。

自賠責基準の慰謝料は、1日4200円です。

日数の算定方法は少し複雑です。

実際に通院した日数(実通院日数)を2倍にした日数通院期間における日数のいずれか少ない方を慰謝料の対象となる日数とします。

つまり、事故発生から120日の間に50日病院や整骨院に通院したとします。

この場合、50日 × 2 = 100日(実通院日数の2倍) < 120日(通院期間)

実通院日数を2倍した100日の方が通院期間の120日よりも少ないので、100日を

慰謝料算定の基礎となる日数とすることになります。

したがって、この場合、4200円 × 100日 = 42万円が慰謝料金額となります。

 

裁判基準

裁判基準では、傷害慰謝料は、入院・通院期間を基礎として算定されます。

算定にあたっては、傷害慰謝料算定のための2つの表を用います。

以下の表1と表2を用いて算出します。

【表1】骨折などの場合
入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306 314 321 328 334 340
1月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311 318 325 332 336 342
2月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315 322 329 334 338 344
3月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319 326 331 336 340 346
4月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323 328 333 338 342 348
5月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325 330 335 340 344 350
6月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327 332 337 342 346
7月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329 334 339 344
8月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331 336 341
9月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333 338
10月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335
11月 150 179 207 234 258 278 296 312 324 332
12月 154 183 211 236 260 280 298 314 326
13月 158 187 213 238 262 282 300 316
14月 162 189 215 240 264 284 302
15月 164 191 217 242 266 286

 

【表2】捻挫や打撲などの軽傷時
入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 35 66 92 116 135 152 165 176 186 195 204 211 218 223 228
1月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199 206 212 219 224 229
2月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201 207 213 220 225 230
3月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202 208 214 221 226 231
4月 67 95 119 136 152 165 176 185 192 197 203 209 215 222 227 232
5月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204 210 216 223 228 233
6月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205 211 217 224 229
7月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206 212 218 225
8月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207 213 219
9月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208 214
10月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209
11月 117 135 150 160 171 179 187 193 199 204
12月 119 136 151 161 172 180 188 194 200
13月 120 137 152 162 173 181 189 195
14月 121 138 153 163 174 182 190
15月 122 139 154 164 175 183

 

表1は、骨折や脱臼など他覚的所見がある場合(レントゲン等で異常があると分かる場合)に用いられる表です。

表2は、むちうち症や打撲、挫創など、他覚的所見がない場合に用いられる表です。

表の見方について説明します。

具体例 骨折をして2カ月通院、その後6カ月間通院を継続した場合

この場合、入院「2月」の縦軸と通院「6月」の横軸の交わる「181」、すなわち、181万円が傷害慰謝料となります。

具体例 首と腰について、むちうちになり3カ月間通院した場合(入院はなし)

この場合、通院のみなので一番左の数字を見ていきます。

通院「3月」の部分である「53」、すなわち、53万円が傷害慰謝料ということになります。

 

算定上の注意点

裁判基準では、上記のとおり、入通院期間を踏まえて算定されます。

但し、入通院期間が長期にわたる場合には、症状、治療内容、通院頻度を踏まえて、実通院日数(実際に通院した日数)の3.5倍程度(むちうちなど他覚的所見がない場合は3倍程度)を通院期間として算定されることがあります。

例えば、骨折で2年間にわたり月1回、合計24日通院していたという場合、通院期間をそのまま2年間とするのではなく、24日 × 3.5倍 = 84日として通院期間を計算される場合があるということです。

 

 

後遺症慰謝料(後遺障害慰謝料)

交通事故により、身体に痛みが残ったり、動かしづらくなったり、傷痕が残った場合などで、後遺障害に認定された場合には、後遺症慰謝料を請求することができます。

後遺障害を認定してもらうための申請方法については、こちらをご覧ください。

後遺傷害慰謝料の金額は、下表のとおりです。

【後遺障害慰謝料の裁判基準と自賠責保険基準の比較】

裁判基準 自賠責保険基準 裁判基準と自賠責保険基準の差額
1級 2800万円 1100万円 1700万円
2級 2370万円 958万円 1412万円
3級 1990万円 829万円 1161万円
4級 1670万円 712万円 958万円
5級 1400万円 599万円 801万円
6級 1180万円 498万円 682万円
7級 1000万円 409万円 591万円
8級 830万円 324万円 506万円
9級 690万円 245万円 445万円
10級 550万円 187万円 363万円
11級 420万円 135万円 285万円
12級 290万円 93万円 197万円
13級 180万円 57万円 123万円
14級 110万円 32万円 78万円

弁護士が、交渉する場合や裁判になった場合には、上記表の裁判基準の金額で交渉を行うことになります。

ただし、この数字は絶対的なものではありません。

被害者に残存している後遺症の程度に応じて、裁判基準からさらに増額の主張をすることもあります。

また、等級に該当しなかった場合であっても、後遺症慰謝料が認められるケースもあります。

例えば、後遺障害に該当する視力障害までは残らなかったものの、後遺症慰謝料として70万円を認めた裁判例があります(東京地判平13.4.11)。

後遺症の逸失利益について確認した方はこちらをご覧ください

 

 

死亡慰謝料

自賠責保険の基準

自賠責保険の基準では、亡くなった被害者本人の慰謝料は350万円とされています。

遺族の慰謝料は、請求することができる人数の数によって異なります。

請求者が、1名の場合は550万円、2名の場合は650万円、3名以上の場合は750万円となっています。

請求者に被扶養者(被害者に養われていた人)がいる場合には、上記金額にさらに200万円が支払われます。

請求することができるのは、被害者の父母、配偶者、子です。

 

裁判基準

裁判基準による死亡慰謝料の具体的な金額の目安は下表のとおりです。

類型 慰謝料の額
一家の支柱 2800万円
母親、配偶者 2400万円
その他 2000万円~2200万円

家族家族「一家の支柱」とは、被害者世帯が、主として被害者の収入によって生計を維持している場合です。

「その他」とは、独身の男女、子供、幼児等です。

上記の金額は、あくまで目安であり、扶養家族の数や加害者側の加害行為の態様などによって、金額は増減することがあります。

例えば、増額事由としては、加害者の飲酒運転及び高速道路の逆走など加害行為の態様が悪質である場合や、事故後の救護・報告義務違反、不合理な弁解を繰り返すなどの不誠実な対応をしている場合に慰謝料の増額を認めた裁判例があります。

死亡逸失利益について詳しく確認されたい方はこちらをご覧ください。

 

 

近親者の慰謝料

弁護士鈴木啓太民法711条には「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。」と規定されています。

この規定により、被害者の父母、配偶者、子は、加害者に対して、被害者が亡くなったことによる精神的苦痛について慰謝料を請求することができます。

また、被害者亡くなったケースでなくても、重度の後遺障害が残るなど亡くなったときと同じくらいの精神的苦痛を被った場合においても、近親者は慰謝料請求することができると考えられています。

どの程度の後遺障害が残存した場合に近親者慰謝料を請求できるかは、事案によって異なりますが、後遺障害1~3級に該当するような重度の後遺障害で介護を要するような場合に、認められるケースが多いようです(4級以下の等級でも近親者慰謝料が認められた裁判例はあります)。

 

 


その他の損害についての計算方法

 積極損害とは?

 休業損害の算定方法は?

 後遺症の逸失利益はどのように計算する?

 死亡による逸失利益はどのように計算する?

 交通事故における慰謝料とは?具体的な目安を解説


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