休業損害の算定方法は?【弁護士が解説】

掲載日:2015年5月18日|最終更新日:2019年7月29日

給料交通事故による損害は、積極損害と消極損害に分けられます。

積極損害とは、交通事故にあったことによりお金を支出しなければならなくなった場合の損害です。

消極損害は、交通事故に遭ったことで、本来得ることができたはずのお金を得ることができなくなった損害です。

休業損害は、交通事故に遭ったことで働くことができず、収入が減ってしまったことに対する賠償なので、消極損害に分類されます。

休業損害の算定は、交通事故被害者の立場によって算定方法が異なります。

そこで、以下では、交通事故被害者の立場に分けて算定方法について、説明します。

給与所得者の場合

給料給与所得者は、毎月会社から雇用契約に基づいて決まった金額を支給されます。

しかし、交通事故により負傷して入院や通院せざるを得なくなり、会社を休まなければならなくなることもあります。

会社を欠勤した場合には、ノーワークノーペイの原則(欠勤や遅刻で労働者が働けなかった時は給料を払う必要がない原則)から、会社は労働者に給料を支払う必要がありません。

こうして会社から減給されてしまうと被害者は経済的に困窮してしまいますので、減給された金額について、休業損害として賠償請求することができるのです。

休業損害の算定にあたっては、事故前の収入額を基礎として、受傷によって休業したことによる現実の減収額が損害とされます。

ここでいう収入額は、いわゆる手取額ではなく、税金や公的保険料などが控除されていない税込み額です。

事故後、連続して休んでいる場合
事故前直近の3ヶ月分の給料の合計額を90日で除して1日単価を計算します。

具体例
6月10日に交通事故に遭い、40日間継続して会社を休み減給された場合

事故直近の給料が、5月は37万円、4月は35万円、3月は36万円のケースでは、以下のような計算方法になります。


(37万円+35万円+36万円) ÷ 90日 × 40日分 = 48万円

上記ケースの場合であれば、48万円が休業損害となります。

 

休業した日が連続してではなく、月に何度かとびとびで休業している場合
事故直近3ヶ月の給料の合計を実労働日数(実際に就労した日数)を除して計算します。

この場合も90日で除する考え方もありますが被害者としては実労働日数で除したほうが有利です。

 

有給休暇を取得せざるを得なくなった場合に補償を受けることができる?
交通事故の治療等が原因で有給休暇を取得せざるを得なくなった場合に、何らかの補償を受けることができるかも問題となります。

この点、有休休暇を取得した場合、減収が生じず、一見すると経済的な損害は生じていないように思えます。

しかし、有給休暇は本来自由に取得することができるものであるのに、交通事故により不本意な形で取得をさせられているので、その分の補償はされるべきです。

裁判実務では、交通事故の治療などで有給休暇を取得した場合には、その日数を休業日として、休業損害が認められています。

 

休業したことで、賞与が減額されたり、昇給・昇格遅延などによる減収は損害に認められる?
休業したことで、賞与が減額されたり、昇給・昇格遅延などによる減収も損害として認められます。

但し、事故が原因で損害を受けていることは明確に証明しなければなりません。

賞与が減額された場合には、賞与減額証明書といった書面を会社に出してもらうことが考えられます。

昇給や昇格が遅延したことで減収したという主張をするのであれば、会社規定などを証拠として、本来であれば、どの程度の昇格昇給が見込まれていたのに、事故が原因でそれが達成されなくなったということを具体的事実をもって主張立証しなければなりません

 

事故によって退職後も働くことが困難な期間は、休業損害期間に認められる?
仮に事故によって退職をして、無職状態となった以降も、現実に働くことが困難な期間は休業期間として休業損害を受け取ることができます。

この場合も、退職以降も働くことが困難であることを証明しなければなりません

 

 

個人事業主の場合

確定申告書に基づく算定

確定申告書自営業者、自由業者(開業医、芸能人、弁護士、プロスポーツ選手など)の休業損害の計算の基礎となる収入は、原則として、事故前年の確定申告の所得額によって認定がされます。

休業中に支出を余儀なくされる家賃や従業員給料、公共料金、租税公課、損害保険料、リース料、減価償却費などの固定経費も相当性があれば、基礎収入に加算することが認められる場合もあります。

年度間において所得金額に相当の変動があり、前年度額で算定することが不適切である場合には、数年分の平均額を採用する場合もあります。

確定申告はしているものの、本当は確定申告よりも、もっと収入があるから、その収入を加算して休業損害を請求したいというケースもあります。

この場合、実際に収入があったことを客観的な証拠により証明することができれば、加算した収入で休業損害を計算してもらえることもあります。

しかし、裁判所は、この証明を厳格にみており、容易には認めてくれません

確定申告において過少申告をしているので、真実の収入が計算できる客観的資料が残っていない場合も多く、証明は困難な場合が多いです。

 

確定申告をしていない場合

確定申告仮に確定申告を全くしていない場合であったとしても、相当の収入があったと認められるときは、賃金センサスの平均賃金額等を参考に基礎収入額が算定されることもあります

ただし、確定申告をしていない場合、当然に賃金センサスを用いて算定してもらえるわけではありません。

事業を行うことで、賃金センサス程度の収入があったことを、被害者において明確に証明しなければならないのです。

この場合も過少申告している場合と同様に、裁判所は、厳格な証明を求めており、容易には認めてくれません

 

家族等労働も含まれている場合

悩む男女事業による所得に本人の労働のみだけでなく、家族の労働も含まれている場合には、本人の労働部分のみが、休業損害の算定される基礎収入となります

本人の寄与分は、事故前後の収入状況、事業の業種・業態、本人の技能・能力、家族の関与の程度などを考慮して算定されます。

1000万円の所得の内、本人の寄与分が70%と認定され場合には、700万円が休業損害の基礎収入となります。

 

事業が赤字の場合

お金に困る男性休業損害は、収入が減少してしまうことに対する補償なので、最初から赤字であれば、減収する対象がないので休業損害は一切生じないとも思われます

しかし、固定経費を基礎収入として考える方法や、拡大した損害を休業損害とするなどの考え方があります

詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

会社役員の場合

会社役員の休業損害

社長社長取締役の報酬には、労働の対価として支払われる労働対価部分と、経営結果による利益配当的部分があります。

利益配当的部分は、その地位にとどまる限り失われるものではありませんから、休業をしても原則として逸失利益の問題とはなりません。

したがって、取締役の報酬額をそのまま基礎収入とするのではなく、取締役報酬の労務対価部分を認定し、その金額を基礎として損害を算定します

労務対価部分と利益配当的部分の区別

明確な基準は存在しませんので、区分にあたっては、会社の規模・収益・業務内容、役員の職務内容・年齢、使用人に対する給料の支給状況などを参考にして判断されることになります。

法人化して会社という形態にはしているものの、社長一人で運営しているような場合で個人事業主のような実態にあるような場合には、上記した個人事業主と同様の処理がなされるべきケースもあるでしょう。

会社の損害

会社役員の給料自体は減額されておらず、役員本人の休業損害が発生していない場合でも、役員が欠勤したことで、会社の業務がまわらず、会社に損害が出るというケースもあります。

しかし、こうした会社の損害は当然には補償されません。

会社役員は、交通事故の被害者として、直接損害を被ります。

会社は、会社役員が被害者となり、休業してしまったことで、損害を受けることになるので、間接損害を被ります。

損害賠償請求をするには、事故と損害の因果関係が認められなければなりませんが、間接損害の場合は、あくまで間接的な損害なので因果関係の立証が難しくなるのです。

判例では、会社と会社経営者(被害者)との間に経済的一体性が認められる場合に因果関係を認めています。

つまり、会社の財布と会社経営者(被害者)の財布が同一であり、会社の損害が会社経営者の損害と実質同一といえるような関係性にあることが必要となります。

経済的一体性が認められるかどうかの判断

営業形態、会社の規模、出資割合、経営者の担当する業務内容、会社と経営者の会計区分の明確性、会社債務を経営者が補償しているか、株主総会や取締役会を開催しているか等といった要素により判断されます。

 

 

家事従事者の場合

主婦家事従事者とは、性別・年齢を問わず、家庭のために主婦的労務に従事する人のことです。

主婦としては女性がイメージされやすいですが、主夫としての休業損害認めた裁判例はあります。

算定にあたっては、賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均賃金額により、基礎収入を算定されることが多いです。

平成29年の賃金センサスでは、377万8200円が年収とされているので、1日単価は1万0351円となります。

入院するなどして、全く家事ができなかったような場合には、1日単価1万0351円の100%が支払われますが、通院にとどまり、かつ、一部でも家事をすることができるような場合には、一定の割合が減額されることがあります。

例えば、事故発生から1カ月は100%、2~4カ月は50%、5~6ヶ月は20%といったような計算をされることがあります(あくまで一例です)。

家事に従事しつつ、パートタイマー等で収入を得ている場合には、その収入が平均賃金を超えていれば、その実収入額により、平均賃金を下回る場合には平均賃金により算定することが多いです。

 

 

無職者の場合

失業者の場合

倒産・失業休業損害は、事故によって働くことができず、収入が減ったことに対する補償です。

したがって、失業している場合、すでに収入がない状態なので、原則として休業損害は認められません

もっとも、具体的に就職予定が決まっていた場合や、具体的な就職予定がない場合であっても、労働能力及び労働意欲があり、諸事情を考慮して、事故がなければ治療期間中に就職していたと認められるような場合には、休業損害が認められることがあります

 

学生、生徒、幼児等

未成年未成年就労の実態がないため、原則として休業損害は認められません。

もっとも、アルバイトをして収入を得ていた場合や、事故による受傷の治療期間が長期化して就職時期が遅れた等の場合には、休業損害が認められることがあります。

就職時期が遅れた場合
収入金額の算定は、就職先が内定している場合には就職先で現実に得たであろう給与額を基礎とします。
就職が内定していない場合
賃金センサスの初任給で学歴別の平均賃金を基礎に算定されることになるでしょう。

 

 


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