死亡による逸失利益はどのように計算する?【弁護士が解説】

掲載日:2015年8月5日|最終更新日:2019年7月29日

死亡による逸失利益とは、交通事故に遭わず生存していれば、得ることができたであろう利益を損害とするものです。

死亡による逸失利益の算定式は次のとおりです。

基礎収入額  ×(1 - 生活費控除率)×  就労可能年数に対応するライプニッツ係数

以下、基礎収入、生活費控除率、就労可能年数に対応するライプニッツ係数について、説明します。

基礎収入額 ×(1-生活費控除率)× 就労可能年数に対応するライプニッツ係数

以下、基礎収入、生活費控除率、就労可能年数に対応するライプニッツ係数について、説明します。


 

基礎収入について

逸失利益とは、事故に遭わずに生存していれば、得ることができたであろう収入を補償するものです。

したがって、計算にあたっては、事故に遭っていなければ被害者が得ることができたであろう年収を基礎として考えなければなりません。

この基礎となる年収のことを基礎収入と言います。

基礎収入は、被害者の立場によって算定方法は変わってきます。

 

 

生活費控除率について

被害者が死亡した場合、被害者の収入はなくなるとともに、他方において被害者が生存していれば生じた生活費は発生しなくなります。

したがって、逸失利益の算定にあたっては、この生活費を控除して計算することになります。

生活費控除率は、被害者の立場によって変わってきます。

家族関係、性別、年齢に照らして下表の割合が目安とされています。

被害者の立場 生活費控除率
一家の支柱 被扶養者が1名 40%
被扶養者が2名以上 30%
女性(主婦、独身、幼児等含む 30%
男性(独身、幼児等含む) 50%
年金受給者 通常よりも高い割合(50~70%)

※この表は、目安であり、個別具体的事情によって異なる控除率で算定されることもあります。

就労可能年数に対応するライプニッツ係数

就労可能年数

高齢者就労可能年齢は原則として67歳です。

つまり、就労可能年数は、死亡した時点の年齢から67歳を差引いた年齢になります。

例えば、43歳で亡くなった場合には、24年が就労可能年数になります。

ただし、例外があります。67歳までの年数が平均余命の2分の1よりも短くなる方は、平均余命の2分の1が就労可能年数となります。

例えば、被害者が58歳の場合、平均余命は25.44年ですので、12.72年が就労可能年数となります。

67歳を超える方については、簡易生命意表の平均余命の2分の1が就労可能年数となります。

例えば、簡易生命表によると、男性70歳の平均余命は、15.73年とされています。

したがって、被害者が70歳の場合の就労可能年数は、7.865年ということになります。

簡易生命表についてはこちらをご参照ください。

 

ライプニッツ係数

電卓のイラスト逸失利益は、事故に遭わなければ被害者が将来にわたって得られたはずの利益です。

つまり、未来に得ることができたお金をすぐにまとめて受領することになるので、その金額をそのまま受け取ると、本来受け取ることができる時点(未来)までに発生する利息分を被害者が取得することになります。

こうした利息(中間利息)控除するための係数としてライプニッツ係数が用いられています。

ライプニッツ係数は、中間利息を控除して、一時金に変算するのに用いられる係数です。

 

死亡逸失利益の計算方法

サラリーマン(給与所得者)の場合

基礎収入

説明する男性原則として事故前の現実の収入を基礎として算出することになります。

多くの場合が、事故前年度の源泉徴収票の収入を基礎とすることになります。

ここでいう収入の金額は、税金などを控除しないいわゆる税込金額のことであり、源泉徴収票の中で「支払金額」と記載されている部分の金額です。

もっとも、現実の収入が賃金センサスによる平均賃金より低い場合で、かつ平均賃金が得られる蓋然性が認められる場合には、平均賃金を基礎として算出できる場合もあります。

また、若年労働者(概ね30歳未満)の場合には、学生との均衡の点もあり、賃金センサスを用いて算定することもあります。

但し、ここで注意しなければならないのは、30歳未満であれば、当然に賃金センサスが用いられるわけではありません。

事故当時において、収入があり、経歴や職種、所属している会社などの事情から将来において、賃金センサスと同等の収入を得るであろうと言える程度の証明が求められます。

裁判例の中には、将来の昇給について、定年までの毎年の昇給を会社の賃金規定に基づいて認めた事例もあります(大阪地判平3.1.29、広島高判平5.8.31)。

また、昇給規定がなくても、将来の昇給が証拠に基づいて相当の確かさをもって推定できる場合には、昇給も考慮することができるとの判例もあります(最判昭43.8.27)。

 

計算方法の具体例

被害者が、男性(会社員、36歳)で年収は480万円、妻と二人の子供がいるケースでの死亡逸失利益は、以下の金額になります。

具体例

      • ・基礎収入 480万円
      • ・就労可能年数 31年(ライプニッツ係数:15.5928)
      • ・生活費控除率 30%(一家の支柱で不要人数が2人以上)

480万 ×(1 - 0.3)× 15.5928 = 5239万1808円

 

個人事業主(事業所得者)の場合

基礎収入

疑問を抱く男性のイラスト原則として、事故前年の確定申告の所得額が基礎収入となります。

申告額と実収入が異なる場合、実収入を立証することができれば、実収入が基礎収入となります。

もっとも、実収入を証明するにあたっては、客観的な資料(帳簿など)から、実際に申告している収入よりも高額の収入を得ていたことを証明しなければなりません。

本来、確定申告は、実収入を申告しなければなりませんので、それと異なる収入を主張する場合には、客観的な証拠をもって明確に主張立証しなければ裁判所も認めてくれません。

確定申告を全くしていない場合であっても、直ちに無収入と推定され逸失利益が否定されるわけではなく、相当の収入があったと認められる場合には、賃金センサスの平均賃金などを参考に基礎収入額を定めることもあります。

但し、この場合にも、事業を行うことで、賃金センサス程度の収入があったことを、被害者において証明しなければならず、裁判所は、厳格な証明を求めており、容易には認めてくれません。

所得が家族の労働や資本からの利益等本人の労働力以外の要素を含めて形成されている場合、所得に対する本人の寄与の割合によって算定されることになります

本人の寄与分は、事故前後の収入状況、事業の業種・業態、本人の技能・能力、家族の関与の程度などを考慮して算定されます。例えば、1000万円の所得の内、本人の寄与分が70%と認定され場合には、700万円が休業損害の基礎収入となります。

 

計算方法の具体例

被害者が、男性(自営業、51歳)で、確定申告の所得金額が650万円、妻と二人暮らしのケースでの死亡逸失利益は、以下の金額になります。

 

 

具体例

  • ・基礎収入 650万円
  • ・就労可能年数 16年(ライプニッツ係数:10.8378)
  • ・生活費控除率 40%(一家の支柱、被扶養者1名)

650万 ×(1 - 0.4)× 10.8378 = 4226万7420円

 

会社役員の場合

基礎収入

膝のケガ取締役の報酬には、労働の対価として支払われる労働対価部分と、経営結果による利益配当的部分があります。

労働対価部分は、基礎収入として認められますが、利益配当部分については、基礎収入として認められない傾向にあります。

したがって、取締役の報酬額をそのまま基礎収入とするのではなく、取締役報酬の労務対価部分を認定し、その金額を基礎として算定されることが多いです。

労務対価部分と利益配当的部分の区別に明確な基準は存在しません。

区分にあたっては、会社の規模・収益・業務内容、役員の職務内容・年齢、使用人に対する給料の支給状況などの諸事情を参考にして判断されることになります。

 

計算方法の具体例

被害者が、男性(会社役員、46歳)で、役員報酬が1300万円で労務対価部分が70%の910万円で独身のケース

具体例

  • ・基礎収入 910万円
  • ・就労可能年数 21年(ライプニッツ係数:12.8212)
  • ・生活費控除率 50%(独身男性)

910万 ×(1 - 0.5)× 12.8212 = 5833万6460円

家事従事者の場合

基礎収入

悲しむ女性のイメージイラスト家事従事者とは、性別年齢を問わず、家族のために家事労働に従事する人のことをいいます。

算定の基礎としては、賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女子労働者の全年齢平均賃金によります。

平成29年においては377万8200円です。

従たる家事従事者の場合(子供夫婦と同居する親など)には、現実に分担している家事労働内容や従事できる労務の程度を考慮して、適宜減額された金額を基礎収入金額とされることもあります。

家事に従事しつつ、パートタイマー等で収入を得ている場合には、その収入が平均賃金を超えていれば、その実収入額により、平均賃金を下回る場合には平均賃金により算定することが多いです。

 

計算方法の具体例

被害者が、女性(専業主婦、28歳)で、夫と二人暮らしのケース

具体例

  • ・基礎収入 377万8200円
  • ・就労可能年数 39年(ライプニッツ係数:17.0170)
  • ・生活費控除率 30%

377万8200円 ×(1 – 0.3)× 17.0170 = 4500万5540円

 

失業者の場合

ケガをした男性のイメージイラスト失業者で死亡時に収入がなかったとしても、年齢、職歴、就労能力、就労意欲等から就労の蓋然性が高い場合には、逸失利益が認められる可能性があります。

この場合、原則として失業前の収入が基礎収入とされます。

もっとも、失業前の収入が平均賃金以下の場合、平均賃金が得られる蓋然性があれば、男女別の賃金センサスによって基礎収入が算定されることになります。

ただし、病気等により長期間就労していなかった場合や、定年退職後全く求職していなかった場合には、就労可能性が認められず、逸失利益が認められない場合もあります。

 

子どもや学生の場合

基礎収入

学生学生・生徒・幼児は、原則として賃金センサスを用いて算出します。

平成29年においては、男性の平均賃金が551万7400円、女性の平均賃金が377万8200円、男女の平均が491万1500円となっています。

小学生、中学生、高校生について、その家庭環境や本人の成績などから大学に進学することがほぼ確実と認められる場合に新大卒の平均賃金によることが認められる場合もあります。

年少女児については、男女格差をできるだけ小さくするために、女性労働者の全年齢平均賃金ではなく、男女の平均賃金で計算すべきという考え方があります。

 

就労可能年数に対応するライプニッツ係数

就労の始期は、特段の事情がない限りは18歳として考えます。

したがって、単純に67歳までの年数を就労可能年数とするのではなく、18歳になるまでの年数分のライプニッツ係数を差引かなければなりません。

例えば、被害者が10歳の場合、57年(10~67歳)に対応するライプニッツ係数18.7605から、8年(10~18歳)に対応するライプニッツ係数6.4632を差引いた12.2973が就労可能年数に対応するライプニッツ係数となります。

 

計算方法の具体例

被害者が、男性(中学生、13歳)のケース

具体例

  • ・基礎収入 551万7400円
  • ・就労可能年数に対応するライプニッツ係数 14.2356
  •    18.5651(54年のライプニッツ係数)-4.3295(5年のライプニッツ係数)= 14.2356
  • ・生活費控除 50%

551万7400円 ×(1 - 0.5)× 14.2356 = 3927万1749円

 

高齢者の場合

付き添い高齢者においても、事故当時、就労している場合や、就労の蓋然性が認められれば、逸失利益が認められます。

算定にあたっては、事故前に現実の収入があれば、その収入を基礎とすることになります。

また、年金について、判例は、各種年金の性質を踏まえて逸失利益性を判断しています。

判例や裁判例で認められたものとしては、国民年金(最判平5.9.21)、老齢厚生年金(東京地判平13.12.20)、地方公務員の退職年金給付(最判平5.3.24)、国家公務員の退職年金給付(最判昭50.10.24)などがあります。

 

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