解決事例
更新日2021年10月22日

交通事故が原因で派遣切り|休業補償が認められた事例

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)





※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Iさん

受傷部位首(頚椎捻挫)
等級なし
ご依頼後取得した金額
150万円(自賠責保険金を含む)

内訳
損害項目 弁護士によるサポート結果
傷害慰謝料 60万円
休業損害 90万円
後遺障害慰謝料 なし
後遺障害逸失利益 なし
結果 150万円

 

交通事故が原因で派遣切りにあってしまったIさん

解説図Iさんは、福岡県の国道で渋滞待ちをしていたところで、後続車に追突される交通事故にあいました。

この交通事故で、Iさんの車の後部が壊れ、修理費は15万円ほどかかりました。

Iさんは事故処理を終えて、その日に自宅近くの整形外科を受診し、レントゲン検査の結果、骨には異常はなく、頚椎捻挫と診断されました。

その後、Iさんは治療に専念するために、派遣先の仕事をしばらく休んで、月の半分ほど整形外科に通院して、牽引の治療や湿布をもらったりしていました。

ところが、交通事故から1か月ほど経過したところで、派遣契約の更新時期となり、派遣先から勤務ができないなら別の人員を入れてほしいと強い要請があり、派遣切りにあってしまいました。

このことをきっかけに、これからの交通事故の補償で休業損害がどの程度補償してもらえるのか不安になったIさんは、弁護士に相談することにしました。

 

 

弁護士の対応で、150万円の賠償金を得ることに成功!

解説図弁護士は、Iさんから事故の状況と現在の状況をうかがって、今後の対応について検討しました。

Iさんとしても、あと1か月ほどで仕事に復帰しようと思っていた矢先に派遣切りにあってしまったため、どうしたらよいかわからない状況でしたので、弁護士が休業損害を認めてもらうために保険会社と交渉をする旨伝え、まずは安心して次の職探しをしてもらうように心がけました。

その上で、退職したことを証明する離職票などを準備するようにIさんに伝え、保険会社にも派遣という性質上、交通事故にあって離職することは十分にありうることであるので、休業損害を補償するように交渉をしました。

この交渉は治療が終わってから行ってもIさんの生活に支障が出るため、資料が入手でき次第、弁護士はすぐに交渉を開始し、暫定的にではあるものの、1か月分の給与補償を治療中に受けることができました。

幸い、Iさんは退職して1か月半後には次の仕事も見つかり、首の痛みも随分よくなったため、3か月半の治療で終了し、最終的な示談交渉へ弁護士が移っていきました。

その際、弁護士はIさんに、派遣のときの給料と新しい仕事の給料の額面に変動はないかと確認をしました。すると、前職との間で3万円ほどの差が出ていることがわかったため、給与明細を準備してもらい、その差額を追加で保険会社に請求しました。

保険会社としても、頚椎捻挫で離職したことを争点として、休業損害を争う姿勢は見せていたものの、弁護士による交渉で内払いをしていたことや幸いIさんが1か月半ほどで仕事を見つけていたこともあり、早期解決を前提に休業損害を全てこちらの主張どおり認めるということになりました。

その結果、Iさんは、慰謝料も合わせて150万円の賠償金を得ることができ、生活にも困らずにすみました。

 

 

退職後の休業損害を補償してもらえるかどうかは医学的な証明がポイント!

今回のIさんの事例のように、交通事故が原因で、勤務先を退職せざるを得ないということは起こります。

このとき、退職後の休業損害を補償してもらえるかどうかは、法律的には、交通事故によるけがでそれまでの業務をすることができないと医学的に証明されているかが非常に重要なポイントとなります。

例えば、医師が就労不能という診断を明確に下しているような場合です。

このような医師の診断を受けるためには、医師に対して、虚偽にならない範囲で自覚症状をしっかり訴え続けてください。

休業損害については、被害者の方が証明責任を負っていますので、この点を証明できなければ、休業損害の補償を受けることはできません。

裁判に至らないケースでも、ただ単に交通事故によって仕事をやめたというだけでは補償を認めてもらうのは困難です。

交通事故の内容、けがの程度、医師の意見、会社の状況などの具体的な事情をしっかりと保険会社に伝える必要があります。

今回のIさんの事例では、事故の程度はそれほど大きいものではありませんでしたが、派遣業という性質から忙しい時に休んでしまうことで派遣切りにあったという事情を弁護士がきちんと保険会社に主張することができたからこそ認められたものだと思います。

内払いについて
休業損害は、生活に直結するものであるため、被害者の方の生活状況によっては、できるだけ早急に支払ってもらうべきケースがあります。
そのため、Iさんのケースのように保険会社と交渉すれば、先に休業損害の一部を支払ってもらう、いわゆる「内払い」をしてもらえることがあります。
会社員の場合、月毎に休業損害証明書を提出し、月毎に休業損害を支払ってもらえたりします。

 

 


なぜ交通事故は弁護士選びが重要なのか

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