解決事例

高齢者の死亡事故。裁判せずに約900万円増額したご家族の事例

執筆者
弁護士 鈴木啓太

弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

所属 / 福岡県弁護士会

保有資格 / 弁護士




※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Tさん
(福岡市博多区)


受傷部位びまん性脳損傷、頭蓋底骨折 
⇒ 事故から約4時間後に死亡
ご依頼後取得した金額
約3300万円

内訳

損害項目 保険会社提示額 弁護士介入後
死亡慰謝料 1400万円 2200万円(近親者慰謝料込)
入院雑費 1100円(1日分) 1500円(1日分)
近親者交通費 なし 約5万円
逸失利益 約850万円(生活費控除割合50%) 約1000万円(生活費控除割合30%)
結果 2400万円 約3300万円

 

状況

Tさんは、福岡市内において、青信号で横断歩道を渡っていたところ、同じく青信号で右折してきた自動車にひかれてしまう事故にあいました。

Tさんは転倒して頭部を強打したため、頭蓋底骨折の重傷を負い、びまん性脳損傷(広範囲に及ぶ脳の損傷がある状態)により救急搬送時から意識がない状態でした。

そして、事故から4時間ほど経過した段階で意識が戻らないまま他界されました。

事故から半年ほど経過したころ、加害者の保険会社より賠償金の提示がTさんのお子さんに対してなされました。

Tさんのご家族は、保険会社が提示した金額が適切なものであるか自分では判断が付かなかったため当事務所へご相談に来られました。

弁護士の関わり

弁護士が加害者の保険会社の提示額を確認したところ、慰謝料が1400万円とかなり低い提示にとどまっていました。

Tさんが70歳を超えた高齢者ということから出された提示と推測されました。

また、Tさんは年金以外にパートで一定程度の収入を得ていましたが、逸失利益について年金と給与ともに一律50%の生活費控除が適用されていました

死亡事故における逸失利益の計算方法について、こちらもご覧ください。

そこで、弁護士は裁判基準に基づけば、慰謝料は2000万円以上認められるべきであること、突然愛すべき家族を失った遺族であるお子さんの慰謝料も当然認められるべきであることを主張しました。

また、逸失利益については、年金部分と給与部分が同じ割合で生活費控除するのは不当であることを主張しました。

そして、Tさんは青信号に従って交差点を渡っていただけで過失がなかったため、提示額が納得できなければ裁判で弁護士費用や遅延損害金も全額請求する旨伝えて交渉しました。

その結果、交渉から半年足らずで慰謝料が 1400万円から 2200万円、逸失利益の生活費控除率について、給与部分は30%とすることで解決しました。

生活費控除率を20%下げることにより、逸失利益は 150万円ほど増額しました。

トータルでは 900万円ほどの増額となりました。

補足

死亡事故の場合、逸失利益の計算式は、以下のような計算式となります。

基礎収入額 ×( 1 - 生活費控除率)× 就労可能年数に対応するライプニッツ係数

ここでいうところの「生活費控除率」についてですが、被害者が亡くなった場合、被害者の収入は無くなりますが、他方で被害者が生存していれば生じた生活費は発生しなくなります。

そこで、逸失利益の算定にあたっては、一定の割合を控除して算定されることになります。

この時に、控除される割合が、生活費控除率です。

生活費控除率は、下表が目安とされています。

被害者の立場 生活費控除率
一家の支柱 被扶養者が1名 40%
被扶養者が2名以上 30%
女性(主婦、独身、幼児等含む) 30%
男性(独身、幼児等含む) 50%
年金受給者 通常よりも高い割合(50〜70%)

本件では、Tさんの生活費控除率は50%で提示されていました。

確かに、Tさんは年金を受給していましたが、年金以外でも給与収入はあったことから、純粋に年金受給者として扱われるべきではありません

本件では、交渉の結果、最終的には生活費控除率は30%で合意することができました。

生活費控除率の点は、被害者のご家族のみで交渉されている場合には、見逃されがちな部分ですが、どの程度控除するかによって、賠償額は大きく変わってきます。

今回のTさんのケースでも20%の違いで 150万円の差が出ていますので、このように細かい部分にもしっかり目を配って交渉しなければなりません。

また、年金を基礎収入とするかどうかについて、判例は、各種年金の性質を踏まえて逸失利益性を判断しています。

判例や裁判例で逸失利益として認められたものとしては、

  • 国民年金(最判平5.9.21)
  • 老齢厚生年金(東京地判平13.12.20)
  • 地方公務員の退職年金給付(最判平5.3.24)
  • 国家公務員の退職年金給付(最判昭50.10.24)

などがあります。

 

 

   
執筆者
弁護士 鈴木啓太

弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

所属 / 福岡県弁護士会

保有資格 / 弁護士

専門領域 / 個人分野:交通事故を中心とした人身障害事件 法人分野:労働問題  

実績紹介 / 交通事故の相談件数年間300件超え(2019年)を誇るデイライト法律事務所のパートナー弁護士。交通事故分野において、他士業や整骨院、一般市民向けのセミナー講師も務めた。


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