解決事例
更新日2020年12月30日

夫婦で交通事故、合計約175万円の賠償金を獲得した事例

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Wさん

受傷部位首(頚椎捻挫)
ご依頼後取得した金額
夫婦2人総額 約175万円(治療費等を除く)

内訳
損害項目 弁護士によるサポート結果
休業損害 約18万円(会社員、有給休暇使用日も補償) 約45万円(主婦の休業損害)
傷害慰謝料 約55万円(裁判基準満額) 約55万円(裁判基準満額)
結果 約75万円(既払金を除く) 約100万円(既払い金を除く)

 

状況

Wさん(50代男性)は奥さん(50代女性)と休日に映画に行くため普通自動車を運転中、赤信号で停車したところ、後ろからきた軽自動車に衝突されました。

助手席にはWさんの奥様が同乗していました。

Wさんも奥様も首や肩の痛みを感じ、整形外科に通院したところ、頸椎捻挫と診断されました。

Wさんら夫妻は3か月ほど通院した後に症状固定となり、幸いにも後遺障害は残りませんでした。

保険会社との交渉は奥様の分も含めてWさんが対応していましたが、仕事がありなかなか対応できないことや、保険会社との情報量の格差に不安を感じたWさんは、弁護士に相談することにしました。

デイライト法律事務所にご相談に来られたWさんらは、加入する自動車保険に弁護士費用特約が付帯していることがわかったため、弁護士費用特約を使用して弁護士に依頼されました。

 

弁護士の対応

弁護士は、Wさん夫妻から委任を受けた後、直ちに相手方保険会社宛てに受任通知(弁護士が代理人として委任を受けた旨の通知)を送りました。

これ以降、弁護士が窓口となり、Wさんは直接保険会社と連絡を取り合わなくてもよくなりました。

弁護士は早速示談交渉に取り掛かりましたが、以下の点が争点となりました。

休業損害

弁護士は、相談でWさんらに休業損害が発生しないか確認しました。そうすると、Wさんは仕事の休業で1週間休んでいたことがわかりました。

また、奥様はパートタイマーとして勤務しつつ、主婦として家事労働を行っており、3日ほど仕事を休んだことがわかりました。

Wさんの休業損害は、休業損害証明書を会社に提出してもらい、それを根拠資料として提出したところ、有給休暇使用分も含めて全額約18万円が補償されました。

奥様の休業損害について、相手方保険会社は、兼業主婦になるため、パートタイマーの3日間の休業分しか補償しないと主張していました。

しかし、弁護士が奥様の仕事の内容を聞き取ったところ、パートタイマーとして出勤する日は週に3日間ほどであり、出勤する日も4~5時間程度の短時間で終了することがわかりました。

そして、仕事に出ている時以外は、家で食事の準備や洗濯、買い物などの家事労働を行っていたことを確認しました。

弁護士はこのような事情をもとに、兼業主婦であっても、奥様が主として家事労働を行っており、今回の事故による負傷によって家事労働を制限されたことを具体的に主張しました。

その結果、奥様について主婦としての休業損害が認められ、約45万円を獲得することができました。

傷害慰謝料

通院3か月分の傷害慰謝料について、相手方保険会社は、Wさんらの負傷の程度が比較的軽微であり、訴訟外であることなどから当初48万円を提示してきました。

これに対して弁護士は、Wさんらが3か月間週に3~4回ほどリハビリのために通院しなければならず、症状固定後も痛みは完全にとれていないことなどを主張し、傷害慰謝料の増額を求めました。

その結果、Wさんも奥様も、約55万円に傷害慰謝料が増額しました。

映画のチケット代

Wさんと奥様は、2人で映画を観に行く途中で事故に遭ったため、その後の事故処理や通院などに時間をとられ、結局映画を観に行くことができなくなりました。

そのため、事前に支払っていたチケット代約4000円が無駄になってしまいました。

弁護士は、Wさんからチケット予約の確認メールを提供してもらい、内容を確認したところ、「キャンセルでの返金は一切しない」という規約があることを確認しました。

そこで、弁護士は、Wさん夫妻は今回の事故がなければ映画を観ることができたはずであり、後日キャンセルして返金などもできないことを主張し、チケット代も補償の対象とするよう交渉しました。

その結果、映画のチケット代約4000円も補償してもらうことができました。

結果

以上のような示談交渉の結果、Wさんについては通院交通費、休業損害、傷害慰謝料などの合計約75万円が、奥様については通院交通費、主婦休業損害、傷害慰謝料などの合計で約100万円が補償され、合計約175万円を獲得することができました。

 

弁護士のアドバイス

兼業主婦の場合の主婦休業損害

主婦の方は、他人のために家事労働を行っているため、交通事故により家事労働ができなくなったり制限された場合は、主婦休業損害が認められる可能性があります。

もっとも、パートタイマーなどで働きつつ、家に帰ってから家事をするといった兼業主婦の場合、一方では仕事での休みもあり、どちらを休業損害として認めるかが問題となります。

この点、保険会社は、仕事をしている場合は、主婦としての活動はそれほどしていないはずだと主張して、主婦の休業損害を認めない場合があります。

しかし、兼業主婦の場合であっても、パートタイマーで短時間働いているだけで、専業主婦とそれほど変わらない場合もあるでしょう。

このような場合は、主婦休業損害で評価する方が実態に即しているといえます。

したがって、兼業主婦の場合は、日ごろ行っている家事労働の内容や仕事の内容、出勤・退勤時間などを詳細に説明することが必要となります。

休業損害が適切に補償されるか不安のある方は、まずは専門家である弁護士にご相談ください。

映画のチケット代

交通事故に遭ったことで、その後の予定をキャンセルせざるを得なくなることは多々あります。

キャンセルしたことで金銭的な損失が生じた場合には、相手方に請求することができる可能性があります。

交通事故による損害として請求することができるのは、交通事故と因果関係があるものに限られます。

したがって、キャンセルせざるを得なかった経緯や、キャンセルすることでキャンセル料などの損害が生じることを、丁寧に説明する必要があります。

本件では、チケット予約の確認メールでチケットの購入を証明するとともに、キャンセルでの返金が不可能なことを証明することで、チケット代相当の金額を賠償してもらうことができました。

夫婦で乗車中の事故の過失割合

過失割合は、事故を発生させたことについて、落ち度がある場合に生じるものです。

夫婦で乗車していて、夫が運転していたところ、出会い頭の交通事故に遭った場合、夫と加害者には、それぞれ過失割合が生じます。

この点、妻は、運転していたわけではないため、何の過失もありません。

しかし、加害者は、妻に100%の賠償金を払った場合、夫に対して、夫の過失割合分を求償することができます。

例えば、夫20%、加害者80%の過失割合の場合、加害者が妻に対して100%の賠償をすると、加害者は、夫の過失割合分の20%を夫に求償請求することができるのです。

夫と妻の家計が同一の場合には、20%分のお金が行ったり来たりするだけで支払の手続の手間だけがかかります。

そこで、夫と妻のように家計が同一の場合には、被害者側の過失として、最初から妻についても過失割合分を差し引くという考え方がとられています。

つまり、夫20%、加害者80%の過失割合の場合、妻について、あらかじめ20%分の過失割合を差し引いて賠償を行うということです。

 

 


なぜ交通事故は弁護士選びが重要なのか

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