解決事例
更新日2020年8月17日

左鎖骨骨折などの重傷を負い、弁護士により後遺障害が認定された事例

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Zさん

受傷部位左肩(左鎖骨遠位端骨折)、左膝(左脛骨近位端骨折、左内側半月板損傷)
等級併合11級(左肩関節機能障害 12級6号、左膝痛 12級13号)
ご依頼後取得した金額
750万円

内訳
損害項目 弁護士によるサポート結果
入院雑費 14万1000円(1500円×94日)
休業損害 120万円
傷害慰謝料 170万円
後遺障害逸失利益 300万円(年齢別賃金センサスの60%、20%、10年間)
後遺障害慰謝料 378万円(裁判基準の90%)
過失相殺 30%→20%
結果 750万円

 

 

状況

Zさんは、コンビニエンスストアで飲み物を買った後、片側2車線の大通りを横断していたところ、原付バイクに衝突する交通事故にあいました。

事故当時は早朝でまだ日の出の時間より前だったこともあり、車の通りはほとんどなく、Zさんは横断歩道ではないところを横断していて、渡りきる直前で原付バイクにひかれてしまいました。

Zさんはそのまま救急車で病院に搬送され、各種検査の結果、左鎖骨遠位端骨折、左脛骨近位端骨折、左内側半月板損傷と診断されました。

そのため、事故から1週間後に鎖骨と左膝の手術を行い、骨折していた鎖骨と膝をスクリューで固定し、半月板を除去しました。

その後、Zさんはリハビリのために3か月ほど入院を余儀なくされ、退院後も定期的に通院を行っていました。

事故から1年経過して症状固定となり、後遺障害診断書を作成してもらった段階で、Zさんと同居する息子さんが今後のことが不安になって弁護士に相談に来られました。

 

弁護士の対応

弁護士は、Zさんの後遺障害診断書を確認したところ、左膝の可動域については、4分の1以上の制限になっていなかったものの、左肩については4分の1以上の制限が残っている状態でした。

そこで、鎖骨骨折による影響であることを裏付けるために、主治医の先生に書面照会を行い、肩関節の可動域制限が手術後の固定に起因するものであるということを回答してもらいました。

この回答書を添付して、自賠責保険へ後遺障害の被害者請求を行いました。

その結果、肩関節の機能障害が認定されました。

また、脛骨骨折と半月板損傷による膝関節痛も他覚的所見があるとして14級ではなく、12級13号が認定されました(併合11級)。

この被害者請求の結果を踏まえて、保険会社と交渉を行いました。

保険会社との交渉では、主に休業損害、逸失利益、過失相殺が問題となりました。

Zさんは、パートとして 100万円弱の収入を得るとともに、息子さんの家族と同居して、息子さんの妻と協力して家事にも従事していました。

そこで、弁護士は家事従事者として休業損害と逸失利益を請求したところ、保険会社は、妻がパート従事者であるはずだと主張して否定してきました。

そこで、弁護士はZさんに家事分担の内容を詳細に聞き取り、保険会社へ書面を提出しました。

この書面も踏まえて、保険会社は賃金センサスの50%を前提に、休業損害と逸失利益を計算すると主張しました。

Zさんは裁判はしたくないという意向であったため、その中で最大限の補償を得られるべく、弁護士は賃金センサスの50%ではなく、60%を最低限補償すべきであると主張し、最終的に保険会社に認めてもらいました。

また、過失についても、保険会社は大通りかつ横断歩道のないところの横断であることから30%の過失相殺を主張していました。

しかし、弁護士は実況見分調書を取り寄せた上で、横断していた場所は信号機はないものの、交差点になっており、自動車が右左折できるように中央分離帯がない場所であり、保険会社の根拠とする判例タイムズの図は当てはまらないと指摘し、20%で示談しました。

最終的に、Zさんは自賠責保険金も含め、750万円の補償を得ることができました。

 

弁護士のアドバイス

後遺障害申請

後遺障害の申請の方法は、2つあります。

事前認定 保険会社を通じて後遺障害申請をしてもらう方法
被害者請求 被害者自身、あるいは、依頼を受けた弁護士が後遺障害申請をする方法

1つは、相手保険会社に手続きを行ってもらう事前認定という方法があります。

事前認定のメリットは、保険会社が手続きを全て行ってくれるため、被害者の手間が大きく省けます。

デメリットは、後遺障害認定がなされた場合に、自賠責保険からすぐに賠償金を受け取ることができません。

また、保険会社は、申請にあたって必須の書類は提出してくれますが、必須の書類でない被害者にとって有利な資料は提出してくれていない可能性があります。

もう1つの方法は、被害者請求という方法です。

被害者請求では、被害者が後遺障害の申請を行う方法です。

被害者請求のメリットは、被害者に有利と思われる証拠は、申請に必須の書類でなくても自由に添付して申請することができます。

また、後遺障害に認定された場合には、任意保険会社との示談に先立って、自賠責保険の基準にしたがった賠償金を受領することができます。

デメリットは、被害者自身で申請しないといけないため、資料の収集や資料の作成に手間がかかることです。

本件の事例では、被害者請求の方法で弁護士が全ての資料を収集、作成して後遺障害の申請を行っています。

弁護士に依頼された場合には、後遺障害の申請も全て弁護士が行います。

本件では、Zさんの肩の可動域制限が事故による骨折が原因であることを明確にするために、弁護士において、主治医に医療照会を行い、肩関節の可動域制限が手術後の固定に起因するものであるということを書面で回答してもらい、その書面を添付して申請しています。

後遺障害の申請にあたっては、必須書類以外の資料を添付する必要がないケースもありますが、事案によっては被害者に有利となりうる追加資料を添付して申請した方がよいケースもあります。

 

家事従事者の休業損害・逸失利益

主婦本件では、Zさんが家事従事者に該当するかどうかが争われました。

もっとも、Zさんは、同居家族のために家事を行っていました。

したがって、その家事の内容や、息子の妻との家事の役割分担などを具体的に説明することで、Zさんも家事従事者としての立場も認められ、家事従事者の立場を踏まえた休業損害と逸失利益の賠償を受けることができました。

仮に、家事従事者としての地位が認められなければ、パート収入を前提に休業損害や逸失利益が算定されることになり、賠償金額は大きく減少するところでした。

主婦の休業損害について詳しくはこちらをご覧ください。

また、主婦の逸失利益について詳しくはこちらをご覧ください。

 

過失相殺

本件では、過失相殺も争いになりました。

過失相殺は、損害全体から賠償金が差し引かれることになります。

したがって、過失割合が10%違うだけで数十万円、数百万円賠償金の額が変わってくることがあります。

交通事故事件では、物損(車のい修理費用など)が先に進められ、過失割合も人損に先行して話合われることが多くあります。

こうした場合に、物損のことだけを考えて、過失割合を安易に合意してしまうことがありますが、一度合意してしまうと、保険会社は、人損の交渉においても、その過失割合を強く主張してくることになります。

したがって、過失割合を考えるにあたっては、ドライブレコーダー、防犯カメラの映像、実況見分調書、当事者の言い分などの情報から、具体的に検討する必要があり、合意するにあたっては慎重になる必要があります。

 

 


なぜ交通事故は弁護士選びが重要なのか

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