弁護士コラム

交通事故を起こした従業員の会社への賠償請求を認めた事例

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

交通事故を起こした従業員の会社への賠償請求を認めた事例(横浜地裁平成25年1月31日)

 

事案の概要

建築のイメージ画像
訴訟提起した会社は、塗装・建築工事を主な業とする会社でした。

事故当時も大規模修繕工事の塗装工事を受注していたところ、作業に従事していた3人の従業員が乗車した車が交通事故に遭い、作業を継続することができなくなりました。

そのため、会社は塗装工事を外注せざるを得なくなり、本来従業員に支払う給与額よりも多額の外注費がかかったことから、その差額を損害として請求した事案です。

 

判旨

裁判所は、
「乗車していた原告従業員三名の受傷・休業により、代替要員を確保できず、納期も限られていたため、原告は、請け負っていた塗装工事を外注会社に下請けさせることを余儀なくされた」

「原告従業員三名は上記工事の現場から原告の所有する原告車両に同乗して帰る途中であったというのであり、翌日以降も同工事に専従することが予定されていたと認められる。このような場合は、例えば被告車両が上記現場に飛び込んで同工事を妨げた場合と区別する実質的理由に乏しいと考えられ、むしろ原告は直接の被害者に類するものといえなくもない

と判断し、本来従業員に支払う給与額と外注費の差額の損害について、事故との因果関係を認めました。

 

補足説明

会社は、法人として独立した存在であり、法的には事故被害者とは別の主体です。

したがって、会社は、従業員が事故に遭ったことで生じた会社の損害を加害者に損害賠償請求できるのか、いわゆる間接損害の賠償の可否が問題となります。

この点、最高裁判例は、事故被害者(経営者等)に代替性がなく、被害者と会社が経済的に一体をなすような関係である場合には、会社の賠償請求を認めています(最判昭和43年11月15日)。

弁護士鈴木啓太画像本件では、事故被害者である従業員と会社に経済的一体性が認められないことは明らかな事案ですので、最高裁判決を前提にすれば、請求は認められないと考えられます。

しかし、本判決では、「被告車両が上記現場に飛び込んで同工事を妨げた場合と区別する実質的理由に乏しいと考えられ、むしろ原告は直接の被害者に類するものといえなくもない」と判示し、会社の損害賠償請求を認めました。

当事務所の弁護士は会社に対する賠償請求の相談も受けています。

会社に対する賠償請求については弁護士までお気軽にご相談ください。

 

 

 


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