弁護士コラム

火災と自動車保険

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

火災のイメージ画像平成28年12月22日新潟県糸魚川市で大火がありました。焼損した家屋は156棟、11人の方が負傷しました。

原因は市内飲食店での鍋の空だきによるものでした。

当時の糸魚川市内はフェーン現象による乾いた強風が吹いており、出火した火が次々と木造住宅密集地に飛び火し、被害が拡大しました。

 

不法行為責任と失火責任法

他人の身体や財産に損害を発生させた場合、その原因である行為をした人(加害者)に故意または過失があれば、被害者は加害者に対しその損害につき賠償請求ができます(民法709条)。

ところが火災の場合、火元である加害者が過失で火事を出したときは、加害者が民法709条の賠償責任を免れることができます。

お金のトラブルのイメージ画像なぜ、加害者が賠償責任を免れるのかというと失火責任法という法律によって免責されるからです。失火責任法は、日本の家屋には木造家屋が多く、加害者に過大な責任を負わせることを回避する趣旨で制定された法律ですだから、出火により加害者の賠償責任を負うのは、加害者に故意または重過失のあるときになります。

ちなみに、アパートなどの部屋を賃借している人が失火をした場合、貸主は債務不履行に基づく賠償請求ができ、賃借人は失火責任法による損害賠償責任を免れることはできません。

 

火災保険

このように火元の人に失火責任を追求できないことがあるので、建物の所有者は火災保険に加入し、建物、家財を守る必要があります。

説明する男性のイラスト火災保険は、火災や盗難、自動車などの物の衝突、落下物の衝突、落雷などの自然災害から、自宅の建物や家財が被害を受けたとき保険金が支払われます。もっとも、火災保険では地震や噴火、津波による損害は補償されません。地震や噴火、津波による損害リスクには別途に地震保険に加入する必要があります。

 

車両火災と自動車保険

保険のイメージ画像自宅に駐車していた自動車が火災により燃えて壊れてしまった場合、自動車の損害は火災保険で補償されるのでしょうか?

実は火災による自動車の焼損は火災保険では補償されません。自動車を火災リスクから守るのは、任意自動車保険に組み込まれている車両保険です。

車両保険とは、契約した自動車が事故によって壊れた場合、その修理代を補償するものです。

 

 


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