交通事故の流れを弁護士が解説|事故直後から賠償金受け取りまで

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

交通事故発生から最終的な解決までには、いくつかの段階があります。

それぞれの段階で、悩ましい問題が生じることがあるため、判断に迷われたら専門の弁護士に相談すべきでしょう。

この記事では、交通事故を解決するまでに被害者が押さえておくべきポイントを段階に分けて解説しています。

この記事でわかること

  • 交通事故解決までの流れ
  • 事故発生から解決までに押さえておくべきポイント
  • 弁護士に依頼するタイミング

 

交通事故発生時の流れ

交通事故に巻き込まれたら、以下の6つのポイントを留意してください。

 

STEP1 相手方の情報を確認する

交通事故に遭った場合には、確実に相手の身元を確認しておくことが必要です。

相手の身元を確認せず警察も呼ばずに、その場を離れると相手方を特定することが困難になります。

相手方の自動車保険による補償を受けたくても、相手方が誰であるか分からなければ、請求する相手保険会社も分かりません。

したがって、どんなに急いでいても相手の氏名、住所、電話番号は確認されるようしてください。

では、相手方の身元の情報を確認できなかった場合にはどうすればいいでしょうか。

例えば、相手方が事故現場から逃げた場合、あるいは、身元を明かすことを拒んだ場合が考えられます。

こうした場合には、確実にその場で警察を呼びましょう(こうした場合でなくても警察には連絡してください)。

ひき逃げの場合であれば、警察に捜査してもらい身元を割り出してもらう必要があります。

また、身元を明かすことを拒んでいた場合でも、警察を呼んでおけば交通事故証明書が作成され、交通事故証明書にて相手の身元を確認することができるのです。

 

STEP2 警察に連絡して交通事故の届け出をする

交通事故に遭った場合には、必ず警察に連絡してください。

上記したように相手方の身元をはっきりさせるという意味もありますが、警察に届け出ていないと保険が使用できない可能性もあります。

保険を使用するには、交通事故証明書が必要となりますが警察に届け出ていないと交通事故証明書が発行されません。

したがって、交通事故に遭った場合には必ず警察に届け出ましょう。

 

STEP3 事故状況の証拠を収集する

事故発生直後は、気が動転して事故状況の収集まで頭が回らないこともあるかもしれません。但し、後々のトラブル防止のためにも出来る限りの証拠保全はされるべきでしょう。

車の破損状況の写真

車の破損状況の写真については、通常、修理する前に保険会社や修理工場で撮影の上、保存されます。

しかし、保険会社が介入しない場合には、適切な写真が保存されない可能性があるので、破損状況が分かる写真を残しておくことをおすすめします。

 

ドライブレコーダーの映像

ドライブレコーダーは、事故後、早い段階でSDカードなどの記録媒体を抜いておかないと映像が上書きされ、事故状況の映像が消えてしまう可能性があります。

したがって、事故後、すぐにSDカード等の記録媒体をドライブレコーダーが抜き取り、保管しておくべきでしょう。

また、自分の車にドライブレコーダーがついていない場合でも相手方や、第三者のドライブレコーダーに事故映像が映っている場合があります。

第三者のドライブレコーダーを借用するには、事故直後に第三者の連絡先を聞いてお願いをしておかないと映像を入手することは難しくなるでしょう。

 

目撃者

目撃者がいれば、その場で氏名や連絡先を聞いて協力をお願いすることも考えられます。

 

ケガした体の部位の写真

自分の体に傷跡などの痕跡があれば、写真にとって保存しておくのも有効です。

傷跡が生じるほどの事故であったことが客観的に証明できるからです。

 

STEP4 保険会社に連絡する

交通事故に遭った場合には、自分が加入している保険会社に事故の報告をしましょう。

相手方の保険の加入状況によっては、被害者の保険を使用しなければならない可能性もあるますし、弁護士費用特約を使用する場合には、必ず保険会社に連絡をしておく必要があります。

 

STEP5 速やかに病院で治療を受け、診断書を書いてもらう

交通事故でケガをした場合には、速やかに病院を受診してください。

痛みがあるのに病院に行かないまま放置すると、保険会社から治療費を支払ってもらえない可能性があります。

事故から一定の時間が経過した後に病院に行った場合、保険会社から事故との因果関係を否定される危険性があります。

したがって、できれば当日、遅くとも2〜3日以内には病院を受診されるべきでしょう。

病院では、警察提出用の診断書を作成してもらい警察に提出されてください。

警察に診断書を提出しないと物損事故として処理され、実況見分調書(警察が作成する事故の詳細を記した書面)が作成されません。

また、物損事故のままにしておくと賠償金の支払いにあたって自賠責保険から不利に評価される可能性があります。

 

STEP6 弁護士にこれからのことを相談する

弁護士に早い段階で相談することで、解決までの流れを把握することができ、解決までのイメージを具体的に持つことができます。

また、過失割合の交渉は事故後、すぐに始まります。

不利な合意をしてしまわないように早い段階から専門の弁護士に相談しておくことが望ましいでしょう。

 

 

交通事故による治療開始から賠償金が支払われるまでの流れ

交通事故が発生してから、最終的に解決するに至るまでには、以下のような段階を経ることになります。

交通事故が発生して、体に痛みがある場合には、速やかに病院に行く必要があります。

病院に行って、必要があれば治療を継続することになります。

治療を一定期間継続して治癒すれば治療は終了です。そのまま示談交渉へ進むことになります。

しかし、治療を継続しても痛みや体の動かしづらさが治らない場合には、症状固定として後遺障害の申請をすることになります。

後遺障害が確定した後は、示談交渉に入ることになります。

示談交渉では、保険会社と賠償金の金額を交渉します。

示談交渉で解決に至らない場合には、訴訟提起をして裁判にて決着をつけることになります。

交通事故解決までには、こうした経過を経ることになります。

それぞれの段階で悩ましい問題があるため、弁護士に依頼するか、あるいは、相談しながら進めることをお勧めします。

 

後遺障害申請にも影響が!治療中に注意すべきポイント

まずは治療に専念

交通事故にあってケガをした場合、まずは治療に専念しましょう。

事故後は、ケガは治るのか、仕事は続けられるのかなど、不安な気持ちになると思います。

また、相手方の保険会社から頻繁にくる連絡にも対応しなければなりません。

しかしながら、被害者の方にできることは、まずは治療に専念することです。

弁護士に依頼すると、保険会社とのやり取りは弁護士が行うことになるため、被害者の方に直接保険会社から連絡が来ることはなくなります。

保険会社からの連絡がストレスになるような場合には弁護士に依頼することも検討されてください。

 

主治医に症状を明確に伝える

症状固定の時期や後遺障害の申請にあたっては、主治医の先生の意見書や後遺障害診断書が重要な資料となります。

また、保険会社が治療費を支払っている場合、病院は、毎月、主治医の作成した診断書や診療報酬明細書といった書類を保険会社に提出しています。こうした書類も重要な資料となります。

診断書や診療報酬明細書に、症状を適切に記載してもらうように、主治医の先生の問診時には、痛いところや痛みの内容(例えば、しびれなのか、うずきなのか等)を漏れなく話すようにしましょう。

主治医に症状を言いづらいという方もいらっしゃると思いますが、その場合、弁護士から主治医の先生へ文書をお送りすることも可能です。

 

休業損害は治療中でも請求可能

休業損害は、治療が終了した後の示談交渉のときに請求することもできますが、治療中の段階でも請求することができます。

毎月の生活費が減ってストレスにならないよう、治療中でも休業損害を請求された方がいいでしょう。

 

治療費や通院のためのタクシー代等を立て替えた場合には領収書を保管

交通事故に関連する支出があった場合には、その領収書は保管しておくべきです。

最終的に保険会社に支払ってもらえなかったとしても、領収書がないとそもそも、交渉にすらならない可能性があるからです。

通院のためのタクシー代などは、領収書がないと利用日や金額の証明ができないため保険会社はまず支払ってくれません。

 

 

治療費の打ち切りに注意!症状固定時期に押さえておくべきポイント

症状固定の判断は慎重に

症状固定とは、治療を一定期間継続したうえで、これ以上治療を行っても症状の改善が見られない時点をいいます。

よく保険会社から「事故から〇か月たつので、症状固定です。」ということを言われますが、多くの場合、この傷病であれば、一般的にはこのくらいの治療期間だろうという推測に基づいて判断されています。

しかし、症状固定の時期はあくまで個別の事案に応じて決定されるべきものです。

また、症状固定の判断は医学的判断になるため、保険会社の一方的な判断で決まるものではありません。

症状固定時期の判断にあたっては、被害者の症状の経過を最も把握している主治医の見解が尊重されるべきです。

症状固定を巡って裁判になれば、最終的には裁判官が決定することになりますが、裁判官も主治医の意見は参考にします。

したがって、保険会社から治療の打ち切りを打診されても、それを鵜呑みにせず、主治医に相談しましょう。

主治医にどのように相談すればいいか分からない場合には、専門の弁護士に相談すれば、状況に応じた助言をもらえるでしょう。

また、症状固定時期が不適切な場合には、その時期について弁護士が保険会社と交渉することも可能です。

 

 

後遺症が気になる方は後遺障害申請を

後遺障害診断書の重要性

後遺障害申請にあたっては、後遺障害診断書の内容が重要です。

後遺障害の審査は、後遺障害診断書を基に審査されます。

つまり、後遺障害診断書に記載されていない症状は審査されません。

したがって、後遺障害診断書に症状の漏れがないか、しっかりと確認すべきです。

最も記載漏れが多いのは可動域検査の結果です。

骨折や脱臼によって関節の可動域が制限生じることがありますが、後遺障害診断書に可動域検査の結果が記載されていない場合には、可動域の制限について審査がされませんので十分に注意が必要です。

 

認定に有利な証拠を添付する

後遺障害申請の方法には、被害者請求と事前認定の2つの種類があります。

事前認定は、保険会社が全て申請手続きを行なってくれる方法です。

被害者請求は、被害者あるいは被害者に依頼された弁護士が後遺障害申請をする方法です。

被害者請求の方法で申請する場合には、最低限必要な資料に加えて、プラスαで認定に有利となる資料も添付することができます。

後遺障害申請の段階で、どこまで資料を添付するかは事案によって異なりますが、物損資料、カルテ、陳述書、画像鑑定報告書、実況見分調書などを添付することもあります。

 

 

保険会社との賠償金示談交渉のポイント

示談交渉の流れ

弁護士に依頼していない場合では、治療終了後、あるいは、後遺障害等級が確定した後、保険会社から賠償額の提示があります。

この提示に対して、被害者としての言い分を保険会社に伝え金額について交渉していくことになります。

弁護士に依頼している場合には、治療終了後、あるいは、後遺障害等級が確定した後、弁護士が損害の計算をして、保険会社に対し賠償額の提示を行います。

この提示に対して、保険会社が回答し、その回答に対して弁護士がさらに意見を述べるといった流れで進んでいきます。

いずれのケースでも、賠償金の金額に折り合いがつけば合意して示談交渉は終了となります。

 

保険会社の賠償提示を鵜呑みにしない

保険会社が最初に提示してくる賠償内容は、一般的な相場を下回っていることがほとんどです。

提示金額の根拠についても、抽象的な記載にとどまり、根拠がよく分からないことがよくあります。

よく分からないまま、言われるがままに示談してしまうのではなく、どの部分が不十分な提示なのかしっかり検証して交渉すべきでしょう。

自分で判断がつかない場合には、専門の弁護士に相談されることをお勧めします。

 

適切な賠償のために裁判になる場合も

加害者や保険会社と示談交渉を進めても納得のいく賠償額の提示がなければ、適切な賠償を受けるべく裁判をすることになります。

裁判は、弁護士に依頼せず、被害者が自分で行うことも可能です。

しかし、裁判となれば、加害者側にも弁護士がつきます。

裁判では、高度に専門的な知識が必要となるため、被害者が単独で加害者側の弁護士と渡り合うのは難しいでしょう。

したがって、裁判を行う場合には、弁護士に依頼された方がいいでしょう。

裁判と聞くと、「大変そう」、「めんどくさそう」というイメージがおありだと思いますが、弁護士に依頼している場合、裁判所に提出する書類は、全て弁護士が作成します。

また、裁判への出頭も弁護士が行いますので、被害者の方は、当事者尋問や和解の局面といった一定の場合にだけ、弁護士と一緒に期日に参加していただくことで足り、毎回裁判所に足を運ぶ必要はありません。

 

 

賠償金はいつ支払われる

示談交渉で解決した場合

保険会社との交渉がまとまると、保険会社から「事故解決に関する承諾書(免責証書)」「人身事故の損害賠償に関する承諾書(免責証書)」といった題名の書面が送付されてきます。

題名は保険会社によって、まちまちですが、内容は当該事故について書面に記載されている内容で全てを解決するといった趣旨の記載がされています。

この書面に署名押印して保険会社に返送すると、スムーズにいけば1週間程度あれば指定の口座に着金します。

着金日が気になる場合には、保険会社の担当者に事前に確認しておけば教えてくれます。

 

裁判で解決した場合

裁判では、「判決」で終了する場合と「和解」で終了する場合があります。

判決が出て確定した場合には、相手方弁護士から、判決を踏まえた賠償金額の提示があります。裁判では、保険会社は弁護士を立てるため、弁護士から提示がくるのです。

判決となった場合には遅延損害金の支払いを受けることができます。

相手方の弁護士が着金予定日までの遅延損害金を計算して、書面で連絡がくるのが一般的です。

遅延損害金の計算に問題がなければ、そのまま着金予定日に指定の口座に賠償金が支払われることになります。

和解で終了した場合には、裁判所が作成する和解調書に支払期日が記載されることになります。

支払期限は、和解した翌月末、和解から1ヶ月後程度に設定されることが多いです。

もっとも、保険会社も諸手続きが終われば入金手続きをしてくれるので、実際は、2週間程度で振り込まれることも多くあります。

 

自賠責保険からの賠償金について

自賠責保険に被害者請求をした場合には、自賠責保険の審査が終わり次第、自賠責保険基準に沿った賠償金が支払われます。

但し、後遺障害の申請を事前認定の方法(保険会社が申請する方法)で行った場合には、最終的に示談が成立するまで支払われません。

 

 

弁護士に依頼すべきタイミング

交通事故にあったらできるだけ早く専門の弁護士に相談すべきです。

交通事故被害者のほとんどの方は、事故後の流れや保険会社がどのようなアプローチをしているかご存知ありません。

問題が顕在化する前に弁護士がアドバイスすることで、とれる対応も選択肢が複数あることが多く、逆にトラブルになってからでは「時すでに遅し。」ということもあるからです。

全体の流れを早期に把握してトラブルを事前に防止するためにも、できる限り早い段階でご相談されることをおすすめします。

 

 

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