交通事故の解決機関、紛争処理センターとはどんなところ?
交通事故のADR機関である紛争処理センターについて、解説いたします。
目次
紛争処理センターとは
紛争処理センターは、前身の機関である1974年に設立された交通事故裁定委員会が2012年に公益財団法人化した機関です。
交通事故が多発し、その被害者救済が社会問題となっていたという社会的背景を受けて、交通事故関係者の利益の公正な保護を図るため、交通事故に関する紛争の適正な処理に資する活動を行うことを目的としています。
この目的のために、紛争処理センターでは、自動車事故に伴う損害賠償の紛争に対する法律相談、和解あっせん、審査の業務を行っており、こうした手続にかかる費用は無料となっています。
自動車事故であれば対応が可能なので、四輪車だけでなく、原付バイクなどの二輪車の交通事故も取り扱っています。自転車同士の事故や自転車と歩行者の事故は対象外となります。
また、車の修理代をはじめとする物的損害(いわゆる物損)もけがに関する損害である人的損害もどちらも対応しています。
こうした紛争処理センターですが、全国に現在11か所の拠点があります。相談を申し込む申立人の住所か交通事故の発生地を原則として、その場所を管轄している拠点に法律相談などの手続を申し込みます。
紛争処理センターの所在地
東京本部 | 東京都新宿区西新宿2−3−1新宿モノリスビル25階 | 03−3346−1756 |
札幌支部 | 札幌市中央区北1条西10丁目札幌弁護士会館4階 | 011−281−3241 |
仙台支部 | 仙台市青葉区一番町4−6−1仙台第一生命タワービルディング11階 | 022−263−7231 |
名古屋支部 | 名古屋市中村区名駅南2—14−19住友生命名古屋ビル24階 | 052−581−9491 |
大阪支部 | 大阪市中央区北浜2−5−23小寺プラザビル4階南側 | 06−6227−0277 |
広島支部 | 広島市中区立町1−20NREG広島立町ビル5階 | 082−249−5421 |
高松支部 | 高松市丸の内2−22香川県弁護士会館3階 | 087−822−5005 |
福岡支部 | 福岡市中央区天神1−9−17福岡天神フコク生命ビル10階 | 092−721−0881 |
さいたま相談室 | さいたま市大宮区下町1−8−1大宮下町1丁目ビル7階 | 048−650−5271 |
金沢相談室 | 金沢市本町2−11−7 金沢フコク生命駅前ビル12階 | 076−234−6650 |
静岡相談室 | 静岡市葵区黒金町11−7三井生命静岡駅前ビル4階 | 054−255−5528 |
利用の方法
紛争処理センターを利用する場合、まずは、被害者ご自身の住所、交通事故証明書記載の事故現場を管轄するセンターを確認します。その上で、事前に電話をして相談予約をとります。
相談予約の際に、事故の内容や相手方の保険会社、担当者の氏名、相談内容の確認がなされます。
センターの運営状況にもよりますが、予約の電話をしてから1か月程度で実際にセンターに行って初回の相談をするという流れになります。
予約の電話から実際の相談までの間に、紛争処理センターの利用申込書の記入や関係資料の準備が必要になります。主な必要資料は下図のとおりです。
紛争処理センター利用に当たって必要な主な書類
利用申込書 | センターから郵送される書類を記入 |
交通事故証明書 | 被害者自ら取得するか、保険会社から入手 |
事故状況発生報告書 | 被害者自ら作成 |
賠償金提示明細書 | 相手方保険会社から送付されたもの |
診断書、明細書 | 保険会社からコピーを入手 |
休業損害証明書 | 勤務先に作成してもらう |
住民票 | 主婦の場合、主婦休業損害のために必要 |
車検証 | 物損事故の場合に必要 |
車両の損傷状況 | 保険会社から修理前の写真を入手 |
委任状、印鑑証明書 | 弁護士を代理人とする場合に必要 |
手続の流れ
電話予約をして、センターを訪問するまでに必要な書類を準備してからは以下のように手続が進んでいきます。
初回相談
センターから委託を受けている弁護士が被害者の方から話を聞いて、交通事故の内容、保険会社との争いがある点、被害者の方の意向を確認します。
このとき、事前に準備をしておいた書類を弁護士が確認しながら、相談を進めていきます。
なお、相談を担当する弁護士は、基本的にその事件が終結するまでは、交代することはありません。
したがって、最初に相談に対応した弁護士がその後のあっせん手続も担当することになります。
相手方保険会社への連絡と意見確認
初回相談が終了した後に、相談を担当した弁護士が相手方保険会社の担当者へ連絡をして、被害者の方が紛争処理センターに相談をしている旨を伝えます。
そして、保険会社の見解を提出するように指示をします。
通常は書面で見解を出すように指示するケースが多く、保険会社から提出された書面は被害者の方に送付されるのが通常です。
双方立会いのあっせん期日
お互いの意見がまずはそろったところで、弁護士が被害者と保険会社の担当者の双方を同じ日に呼んで、交互に話を聞き、合意できる点を探っていきます。
この際、お互いの言い分のどちらが裁判になった場合に認められそうかという視点ももって、弁護士がそれぞれに話をして、示談ができないか説得をしていきます。
あっせん案の提出
最終的には、相談を担当した弁護士が第三者の視点であっせん案を提出します。このあっせん案を被害者、保険会社の双方が受け入れれば、示談成立により事件は解決します。
あっせん不調後の審査手続
仮に、弁護士が提出したあっせん案が受け入れられず、不調になった場合には、14日以内に審査会の審査申立てを行うことで審査手続に移行します。
審査会は、紛争処理センターで選任された大学教授をはじめとする学識経験者や弁護士などで構成される審査員がそれまでに提出された資料を吟味した上で、被害者、保険会社の担当者双方をセンターに呼び、事実関係を整理した上で、一定の結論を下す手続です。
審査会で出される結論を裁定といいます。この裁定について、裁判所の判決と異なり、一方当事者である保険会社側は異議を述べることができません。
したがって、申立人である被害者が裁定を受け入れる場合には、示談が成立し、事件が終結することになります。
他方で、被害者の方が裁定を不服と考える場合には、裁判所に訴訟提起をして、裁判手続に舞台を移すことになります。
紛争処理センターは、これまで説明した手続を全て無料で行っております。
被害者の方が保険会社との交渉に行き詰まったり、弁護士費用特約がなくて、弁護士に依頼する費用がかかってしまって、被害者にとってメリットが大きくないようなケースでは、この紛争処理センターの手続を利用することを検討すべきでしょう。
また、弁護士がついている案件でも、交通事故の被害者の方の意向や客観的な証拠による証明を厳密に求められる裁判を利用するよりは、話合いでの解決を模索した方がよいような場合には、紛争処理センターを利用するということもあり得ます。