交通事故で上腕骨遠位部骨折。後遺障害は認定される?
自転車で走行中、自動車と接触する交通事故に遭いました。
転倒の際、手をついてしまい、上腕骨遠位部骨折と診断さました。
後遺障害に該当することはありますか?
交通事故で上腕骨遠位部骨折のけがをすると、①肘関節の可動域の制限、②骨折した部分の痛み、③変形障害の3つの後遺障害のいずれかに認定される可能性があります。
上腕骨遠位部骨折とは
上腕骨は、「二の腕」と呼ばれる部分の腕の骨のことをいいます。
上腕骨遠位部というのは、肘関節に近い部分になります。
遠位というのは心臓から遠い方という意味で、上腕骨の場合、心臓に近い近位は肩関節の部分、遠位部は肘関節の部分ということになります。
この部分を骨折してしまうことを上腕骨遠位部骨折といいます。
交通事故の場合、歩いていたり、自転車に乗っているときに事故にあい、転倒してしまうと、肘が伸びた状態で腕をコンクリートに打ちつけてしまい、上腕骨遠位部骨折のけがを負ってしまう可能性があります。
上腕骨遠位部骨折にはいくつか種類があり、上腕骨顆上骨折、上腕骨顆部骨折の2種類があります。
上腕骨顆部骨折には、親指側の部分の骨が折れる上腕骨外顆骨折と小指側の部分の骨が折れる上腕骨内顆骨折があります。
このうち、上腕骨顆上骨折は子どもに多く発生する骨折とされています。
上腕骨遠位部骨折の後遺症
上腕骨遠位部を骨折すると、肘関節に近い部分を骨折していますので、一定期間固定して、リハビリをしても肘関節の可動域が元には戻らないという可能性があります。
また、骨折をするとその部分に痛みや腫れが生じますが、一定期間治療を行っても最終的に痛みが完全には取れずに残ってしまうということもあります。
さらに、骨折した部分が手術や固定によってもうまくくっつかず、交通事故以前の元どおりの形にならないという可能性もあります。
このように、交通事故で上腕骨遠位部骨折のけがを負うと、①肘関節の可動域の制限、②骨折した部分の痛み、③変形障害の3つの後遺症が残ることがあります。
上腕骨遠位部骨折の後遺障害
上腕骨遠位部の後遺症を保険会社に補償してもらうためには、自賠責保険の定める後遺障害の認定を受けなければなりません。
後遺症 ≠ 後遺障害 であるため、後遺症が残ったら必ず補償をしてもらえるわけではありません。
そこで、以下では、上腕骨遠位部骨折に関係する後遺障害の等級について解説していきます。
①肘関節の可動域の制限
上腕骨遠位部骨折の後遺症の一つとして、肘関節の可動域が元に戻らないということが挙げられますが、この後遺症について、自賠責保険の後遺障害では、以下の基準が設定されています。


肘関節の動きとしては、屈曲と伸展というものがあり、肘を曲げて内側に曲げる屈曲という動きが非常に重要です。
例えば、骨折していない方の屈曲が145度(参考可動域の角度)の場合、骨折した方の可動域が70度以下の場合には10級、105度以下の場合には12級に該当する可能性があります。
他方で、130度という場合には、15度可動域は狭くなっていますが、後遺障害には該当しません。
また、上腕骨遠位部骨折に伴い、筋膜で覆われている部分の内圧が高まり、血液が回らなくなってしまうと、血液が手先に循環されなくなってしまい、筋肉や神経が壊死してしまうということがあります。
こうした症状をフォルクマン拘縮と医学的にはいいます。
万が一、フォルクマン拘縮になってしまうと、骨折した部分より先にある手指が動かせないといった後遺症が残る可能性があります。
こうした手に関する後遺障害は、以下の3つが認定される可能性があります。
8級6号 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
7級7号 1手の5の手指又はおや指を含み4手の手指の用を廃したもの
8級4号 1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの
②骨折した部分の痛み
治療をしたにもかかわらず、骨折した部分に痛みが残ったという場合、後遺障害としては、以下が認定されることがあります。


12級と14級との違いは、症状固定の時点で骨折した部分の画像を確認したときに痛みの原因がはっきりとわかるかどうかです。
きちんと骨がくっついている場合には14級が認められるかどうかという問題になります。
③変形障害
上腕骨遠位部骨折のけがを負うと、骨折した部分がうまくくっつかないということもあります。
この場合、後遺障害としては以下の等級が認定される可能性があります。
