後遺障害が認定されたら何が変わるのですか?
後遺障害が認定されたら、「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」という2つの補償を求めることができるようになります。
「後遺障害が認定される」ということは何を意味するのか?
交通事故にあってけがをした場合、治療を一定期間行っても完全には症状が治らないということがあります。
この段階のものは、交通事故の後遺症と捉えられるものです。
こうした後遺症が被害者に残った場合には、後遺障害の認定手続きを行います。
そして、自賠責保険が設定している基準に則って、被害者の方に残っている後遺症が後遺障害として認定されると、それは交通事故において法的な補償対象となるということを意味しています。
すなわち、交通事故による後遺症については、一定の基準を満たしたものだけが保険会社から補償してもらうことができるのです。
そのため、後遺症 > 後遺障害という関係になります。
被害者の方の後遺症に対する補償を保険会社に請求するためには、自賠責保険の後遺障害の認定を得る必要があります。
後遺障害が認定されたら
後遺障害が認定されたら、保険会社に対して、被害者の方に残った症状について補償を求めることが可能になります。
後遺障害の補償というのは、具体的には2つあります。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、後遺障害が残存したことで被害者が感じる精神的な苦痛を慰謝するものです。
けがをして通院を余儀なくされたことに対する慰謝料である傷害慰謝料とは別の慰謝料になります。
そのため、後遺障害が認定されたら、傷害慰謝料と後遺障害慰謝料の2つの慰謝料を請求することができるようになります。
逸失利益
後遺障害が認められることでもう一つ請求可能になるのが、逸失利益です。
逸失利益とは、被害者に残った症状がこれからの将来、日常生活や仕事、家事にどの程度マイナスの影響を与えるかどうか、収入が減少するリスクを補償してもらうためのものです。
このように、後遺障害慰謝料と逸失利益という項目の補償を求めることができるようになります。
当然、後遺障害が認定されない場合に比べて、賠償金の額は高額になります。
後遺障害慰謝料の目安
それでは、後遺障害慰謝料の金額はいくらになるでしょうか?
後遺障害慰謝料の目安となる基準には、傷害慰謝料と同じく3つあります。
- 自賠責保険の基準
- 任意保険会社の基準
- 裁判基準
このうち、任意保険会社の基準は外部には公表されていないため、自賠責保険と裁判基準の後遺障害慰謝料の目安額をみていきます。
裁判基準 | 自賠責保険基準 | 裁判基準と自賠責保険基準の差額 | |
---|---|---|---|
1級 | 2800万円 | 1100万円 | 1700万円 |
2級 | 2370万円 | 958万円 | 1412万円 |
3級 | 1990万円 | 829万円 | 1161万円 |
4級 | 1670万円 | 712万円 | 958万円 |
5級 | 1400万円 | 599万円 | 801万円 |
6級 | 1180万円 | 498万円 | 682万円 |
7級 | 1000万円 | 409万円 | 591万円 |
8級 | 830万円 | 324万円 | 506万円 |
9級 | 690万円 | 245万円 | 445万円 |
10級 | 550万円 | 187万円 | 363万円 |
11級 | 420万円 | 135万円 | 285万円 |
12級 | 290万円 | 93万円 | 197万円 |
13級 | 180万円 | 57万円 | 123万円 |
14級 | 110万円 | 32万円 | 78万円 |
このように、自賠責保険の基準と裁判基準では、慰謝料の目安となる金額に大きな違いが出てきます。
この差は1級へと等級が上がるに従って大きくなります。
逸失利益の計算方法
次に、逸失利益の計算方法についてみていきましょう。
逸失利益の計算方法
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
逸失利益を算出するためには、1基礎収入、2労働能力喪失率、3労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数の3つの数字を導き出す必要があります。
具体例 労働能力喪失期間が5年間となったの場合の逸失利益
後遺障害認定状況 : むちうちで14級9号の後遺障害認定
職業 : 会社員
交通事故にあう前年の年収: 500万円
労働能力喪失期間 : 5年間
労働能力喪失期間(※5年間)に対応するライプニッツ係数: 4.3295
逸失利益の目安額は、500万円 × 5% × 4.3295 = 108万2375円となります。



後遺障害が認定されたら
このように後遺障害が認定されたら、後遺障害慰謝料と逸失利益という2つの補償を求めることができるようになります。
自ずと保険会社と示談交渉を行う賠償額も大きくなり、被害者の方の今後の生活にも影響が大きくなってきます。
そのため、後遺障害が認定されたら、交通事故を専門とする弁護士に相談して、適切な賠償額の目安がどのくらいになるのかアドバイスをしてもらったほうがよいでしょう。