交通事故の加害者が未成年者の場合、誰に損害を請求したらよい?

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

損害賠償請求についての質問です。

交通事故で怪我をしました。

加害者は未成年者でした。

誰に損害を請求したらよいのですか?

弁護士の回答

事故の責任は、原則として交通事故を起こした加害者本人が負います(民法709条)。

損害賠償は加害者へ請求することになりますが、未成年者の保護者に請求できる場合もあります。

加害車両が自動車の場合、車両所有者などの運行供用者へ請求することもできます(例:子どもが親名義の車で交通事故を起こした場合)。

 

交通事故の責任を負う人

交通事故の責任は、原則事故を起こした加害者本人が負います(民法709条)。

この点、加害者が責任を負わないのは、加害者に責任能力がないときです。

責任能力とは、自己の行為が違法なものであって、法律上の責任が生ずるものであることを理解する能力のことです。

一般的には、10歳(小学校3年生〜4年生)くらいまでの未成年者では、責任能力がないとされています。

他方で13歳(中学校1年生)では責任能力があるされています。

したがって、小学校高学年あたりが責任能力が認められる境界線になっています。

もっとも、年齢による画一的な基準は存在しません。

 

未成年者の責任能力が否定されたとき

未成年者の責任能力が否定されたとき、加害者の監督義務者へ責任を追及することになります(民法714条)。

親権者や親権の代行者や未成年後見人、児童施設の施設長などが監督義務者になります。

監督義務者は、監督義務を怠っていなかったこと、監督義務違反と交通事故との相当因果関係がないことを証明できれば免責されます。

これまでは監督義務者の責任がないことを認めた裁判例はほとんどありませんでした。しかし、2015年に最高裁判所が両親の責任を否定する判決を出しています。

事案の概要

サッカーをする子どものイラスト当時11歳の少年が放課後の校庭でサッカーのフリーキックの練習をしていたところ、少年が蹴ったボールが門扉の上を越えて道路上に出てしまい、自動二輪車で走行していた当時85歳の男性がそれを避けようとして転倒し、左脛骨及び左腓骨骨折等の傷害を負い、入院中に誤嚥性肺炎により亡くなったという事案です。

この事案の原審(高等裁判所)の判断では、サッカーゴールの背後の門扉の高さが1.3メートル、その左右には高さ1.2メートルのネットフェンスが設置されているなどの状況からすると、ゴールに向かってボールを蹴れば道路に飛び出す危険があったと認定し、両親には、本件ゴールに向けてサッカーボールを蹴らないように指導する監督義務があったと判断し、これを少年の両親が怠ったとして、両親の損害賠償責任を認めていました。

しかし、最高裁判所は、両親には、「直接的な監視下にない子の行動について、人身に危険が及ばないよう注意して行動するよう日頃から指導監督する義務がある」としながらも、その義務の内容については、「ある程度一般的なものとならざるを得ない」とし、「通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は、当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り、子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではない。」と判示しました。

その上で、少年の両親は、日頃から少年に危険な行為に及ばないようにしつけをしていたこと、また、本件での少年のサッカーゴールに向けたフリーキックの練習は、通常は人身に危険が及ぶような行為ではなく、少年の本件行為を具体的に予見可能であったという特別の事情もないとして、少年の両親の損害賠償責任を否定しました。

 

 

親の責任について

上記の民法714条とは別に、未成年者の事故について、親などの監督義務者自身の過失がある場合には、民法709条の不法行為責任を追及できます。

親には、未成年者の子が交通事故などの過失行為で第三者を負傷させないよう日頃から、指導し、状況に応じて必要な措置をとらなければならない義務があると考えられています。

その義務に違反した結果、未成年者が交通事故を起こし、第三者を負傷させた以上、親もその損害の責任を負わなければならないと考えられるのです。

下記のような事情がある場合、上記の義務に違反していると考えられ、親に賠償責任を追求できる可能性があります。

  • 未成年である加害者の危険運転を知っていながら放置していた
  • 未成年である加害者が過去に重大事故を起こしたのに運転を禁止していなかった
  • 運転に支障をきたす体調不良を見過ごし運転を止めなかった
  • 自転車の運転を容認するのに交通ルールを遵守することを指導しなかった

 

運行供用者への責任追及

運行供用者とは、自動車の使用について、支配権があり、かつ、その使用によって利益を得る者のことをいいます。

運行供用者に該当するかどうかは、その自動車の運行をコントロールできるかどうか(運行の支配)、自動車を運行することで利益を得ているか(運行利益)、という観点から判断されます。

以下の判例は、親の運行供与者責任を認めた判例です。

判例 運行供用者責任を認めた裁判例(最判昭和50年11月28日)

免許を所持せず、子の車に同乗することがない父親であっても、自動車の名義人になることを承諾し、自宅の庭に自動車を保管していたため、「登録名義になった経緯、所有者との身分関係、自動車の保管場所その他の諸般の事情に照らし、自動車の運行を事実上支配、管理することができ、社会通念上自動車の運行が社会に害悪をもたらさないよう監視、監督すべき立場にある場合は、登録名義人は、自動車損害賠償保障法3条所定の事故のために自動車を運行の用に供するものにあたると解すべきである」として加害者の父親を運行供用者と認め、「(保護者は)本件自動車の運行を事実上支配、管理することができ、社会通念上その運行が社会に害悪をもたらさないような監視、監督すべき立場にあった」として、親の運行供用者責任を認めました。

 

未成年が交通事故を起こした場合の交渉相手

任意保険に加入している場合

加害者側が、任意保険に加入している場合には、保険会社と示談交渉をすることになります。

この場合、賠償金については、保険会社が支払ってくれますので、これまで述べていたような、「誰に請求すべきか」といった問題は生じません。

 

任意保険が使用できない場合

保険適用の条件を満たさずに、保険を使用することができなかったり、無保険の場合には、任意保険を使用することはできません。

この場合には、未成年者本人あるいは、その親などの監護権者と交渉をしなければなりません。

もっとも、未成年者や、その親が誠実に対応すれば問題ないのですが、支払い能力に乏しく、十分な補償を受けることができない可能性があります。

したがって、こうした場合には、被害者自身の人身傷害保険等を使用するなどして、治療を受けることを検討されるべきでしょう。

また、任意保険会社に請求できないとしても、加害者側が自賠責保険に加入している場合には、自賠責保険に請求することは可能です。

ただし、自賠責保険は、人身の損害のみで、物損(車の修理費用など)については、補償されません

さらに、自賠責保険にすら加入していない場合には、政府保障事業を利用することを検討すべきでしょう。

政府保障事業は、被害者が自賠責保険の補償すら受けることができないと極めて酷な立場に置かれることに鑑みて、そうした場合には、政府が治療費などのてん補金を支払うものです。

その支払いの計算方法や金額の水準は、自賠責保険と同等です。

未成年者との交通事故であっても、保険会社が窓口になった場合には、補償が全く出ないといった問題はでないでしょう。

しかし、保険会社が窓口とならない場合には、直接、未成年者やその親と交渉することになります。

こうした場合には、交渉が難航することもありますので、一度、弁護士に相談された方が良いでしょう。

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