交通事故の示談交渉はいつから?解決までの期間について解説

執筆者:弁護士 西村裕一 (弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士)

「示談交渉にどのくらいの時間がかかるか?」という質問は、交通事故の被害者の方から最も多く出る質問の一つです。

この記事では、示談交渉はいつから始めるのか、弁護士が介入した場合、交渉開始から解決までの時間はどのくらい要するのかについて詳しく解説します。

 

この記事でわかること

  • 示談交渉から解決までの期間
  • 死亡事故の示談交渉開始時期
  • 後遺障害が残存する示談交渉開始時期
  • 後遺障害が残存しない示談交渉開始時期
  • 物損事故の示談交渉開始時期

示談交渉開始から解決までの期間

解決までの期間は事案の内容によって異なる

交通事故の示談交渉に要する時間は、事案の内容によって異なります。

争点が多い事案については、多くの時間を要しますし、争点がほぼないような事案では時間はかかりません。

例えば、被害者のケガがむちうちで、後遺症もなく、特に争点がないような場合では、1〜2ヶ月程度あれば解決することができます。

事案によっては、1〜2週間程度で示談交渉が終わることもあります。

他方で、後遺障害が残存していたり、過失割合に争いがあるような場合には、3ヶ月程度かかることもあります。

賠償額が1000万円を超えるような高額になるような場合には、保険会社の回答に時間を要することもあるので、3ヶ月以上の期間を要することもあります。

このように、示談交渉の開始から解決までの時間は事案によって異なります。

示談交渉がどのように進んでいるのかを知るには、適宜、弁護士に確認して進捗を教えてもらう事が必要です。

解決までの期間の目安
  • 争点がほぼない場合だと1ヶ月程度
  • 後遺障害や過失割合など争点がある場合には3ヶ月程度
  • 賠償額が高額になる場合には3ヶ月以上

※あくまで目安ですので、事案によって解決までの期間は変わります。

 

解決までの期間は、保険会社の担当者にも影響される

弁護士が入った場合の示談交渉は、弁護士から保険会社に損害賠償請求をして、それに対して、保険会社が回答するという流れが一般的です。

つまり、弁護士が最短で動いたとしても、保険会社の担当者が回答をくれなければ、示談交渉は進みません。

したがって、解決までの期間は保険会社の担当者に影響されることとなるのです。

保険会社の担当者の中には、非常にスピーディに回答をくれる方がいらっしゃいます。

そうした担当者の場合、特に争点がなければ、1週間あれば解決できます。

他方で、何度も督促しても中々、回答をくれない担当者もいます。

こうした担当者に対しては、回答期限を区切ったり、こまめに進捗状況の確認の連絡を入れるなどして、回答を促す必要があります。

 

弁護士が入らない場合の解決期間は?

弁護士が示談交渉をしない場合には、被害者が自分で示談交渉をしなければなりません。

この場合の示談交渉では、保険会社が損害を計算して被害者に提示し、この提示に対して被害者が回答するという流れになります。

保険会社からの提示に対して、被害者がすぐに承諾すれば、それで示談交渉は終了です。

示談交渉の期間という点では、この解決方法が最も短期間で解決できるかもしれません。

しかし、保険会社からの最初の提示は、ほとんどの場合、一般的な相場よりも低額です。

慰謝料の基準には、①自賠責保険基準、②任意保険会社基準、③裁判基準の3つがあり、賠償の水準の高さは、①<②<③の順番となっています。

保険会社が提示する賠償の内容は、①あるいは②の内容であり、③の賠償基準で提示してくることはまずありません。

したがって、保険会社からの提示を鵜呑みにするのではなく、本当に妥当な内容なのか弁護士に相談されることをおすすめします。

 

 

示談交渉の開始の時期は?

示談交渉の開始の時期は、死亡事故、後遺障害が残存する傷害事故、後遺障害が残存しない傷害事故、物損事故のそれぞれで異なります。

以下では、それぞれの示談交渉開始時期等について説明します。

 

死亡事故の場合

示談交渉開始時期

被害者が亡くなった場合には、その相続人が相手保険会社と示談交渉することになります。

49日の法要までの葬儀関係費用を請求することができるため、亡くなって49日以降に損害を確定し、加害者側と示談交渉を開始することになります。

もっとも、示談交渉にあたっては、ご遺族に様々な資料を準備してもらう必要があります。

家族を失った中で、そうした資料を集める負担の大きさは計り知れません。

したがって、ご遺族の可能なペースで資料を集めていただき、資料が揃った時点で交渉を開始することが多いです。

 

後遺障害が残存する傷害事故

示談交渉開始時期

後遺症が残っている場合には、その後遺症の後遺障害等級が確定してから、示談交渉を開始することになります。

後遺障害等級は、症状固定後に損害保険料率算出機構に対して、後遺障害の申請を行うことで審査してもらうことができます。

その結果に納得できない場合には、再度、審査してもらうために異議申立をすることもできます。

こうした手続きを踏んだ上で、認定された等級を前提に示談交渉を開始することになります。

なお、損害保険料率算出機構が認定した等級よりも上位等級を前提として、示談交渉を開始することもできますが、相手保険会社は、まず応じないと考えられますので、その場合には、裁判をする必要があるでしょう。

なお、保険会社が了承すれば、後遺障害部分を確定させないまま、傷害部分(後遺障害以外の部分)を先に交渉して賠償金を受け取ることも可能です。

 

 

後遺障害がない傷害事故

示談交渉開始時期

後遺障害がない傷害事故の場合、傷害が治癒した時点か、あるいは、症状固定した時点以降に示談交渉を開始することになります。

傷害が治癒、あるいは、症状固定した時点で、治療費の金額が定まり、傷害慰謝料の金額も確定することから、これらの時点以降に示談交渉を開始することになるのです。

 

物損事故

物損事故の場合、事故発生後、修理見積もり等が出た時点で示談交渉を開始することができます。

修理見積もりは、修理工場と保険会社の担当者(アジャスター)が協議した上で、作成されるため、作成されるのに事故発生から2周間〜1ヶ月程度は要することが多いです。

 

まとめ

示談交渉を開始してから解決までの期間は、事案によって異なりますが、解決が最も早いのは保険会社からの賠償提示をそのまま承諾することです。

しかし、上記したように、保険会社に最初の提示が妥当な内容であることは、ほとんどありませんので、保険会社の提示を鵜呑みにせず、弁護士に相談されることをおすすめします。

 

 

 

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