よくある相談Q&A

個人事業主・会社役員の後遺障害による逸失利益の算定方法は?

執筆者
弁護士 鈴木啓太

弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

所属 / 福岡県弁護士会

保有資格 / 弁護士


基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数 = 後遺症による逸失利益

により算定します。

 

逸失利益とは

電卓交通事故による後遺障害が原因で、本来得ることができた利益が得られなかった場合、その得られなかった利益を後遺障害による逸失利益といいます。

算定にあたっては、労働能力の低下の程度、収入の変化、将来の昇進・転職・失業等の不利益の可能性、日常生活上の不便等を考慮して行います。

労働における収入に関して、症状固定前が休業損害の問題に対して、症状固定後が逸失利益の問題となります。

逸失利益について詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

個人事業主・会社役員の基礎収入

事業所得者の基礎収入

原則として、事故前年の確定申告所得額が基礎となります。

節税のためなど実際に申告した所得額と実収入に差がある場合は、実収入を立証することが必要です。
立証は、帳簿等の直接の証拠が必要となり、厳格な立証が求められています。

家族経営の場合

所得に対する本人の寄与の割合によって算定されることになります(最判S43.8.2)。

確定申告を全くしていない場合や実際の収入が平均賃金以下である場合

平均賃金が得られる蓋然性が認められれば、賃金センサスの平均賃金などを参考に基礎収入額を定める例が多いです。

 

会社役員の基礎収入

社長会社役員は、労務提供の対価部分は認められますが、利益配当の実質を持つ部分は、基礎収入とは認められません(大阪地判H4.9.21)。

労務提供の対価かどうかは、会社の規模、役員報酬の額、当該役員の職務内容、事故後の当該役員の報酬額の推移などを総合考慮して判断されます。

例えば、実際に稼働しないで役員の地位のみで役員報酬を得ている名目的取締役の場合は、労務提供の対価とはいえないため、役員報酬が基礎収入として認定されません。

 

 

 

労働能力喪失率

労働能力喪失率ですが、後遺障害で認定される等級により異なります。

基本的には、国が定めた下記の労働能力喪失率表に基づいて算定されます。

労働能力喪失率表
第1級 第2級 第3級 第4級 第5級 第6級 第7級
100% 100% 100% 92% 79% 67% 56%
第8級 第9級 第10級 第11級 第12級 第13級 第14級
45% 35% 27% 20% 14% 9% 5%


 

 

労働能力喪失期間

始期
症状固定日の年齢
終期
原則として就労可能年数67歳まで。
障害の内容、部位、年齢、職業、地位、健康状態などによって異なる期間で算定されることがあります。

判例 労働能力喪失率・労働能力喪失期間に関する特殊な裁判例

札幌地判 H27.2.27
ダンスのインストラクター実技指導していた60歳女性が、併合14級の後遺障害を負った事案につき、インストラクターの活動が不可能になったことを考慮し、労働能力喪失率を50%(通常なら5%)と認定しました

福岡高判 H28.11.30
個人事業主として、重量物運搬等の肉体労働をしていた48歳男性が、頚部痛等で併合14級の後遺障害を負った事案につき、症状固定後の事業の状況、身体の症状等を加味して、就労可能期間を67歳までの全期間(通常、後遺障害が軽度の神経症状の場合、労働能力喪失期間は5年などに限定されることが多い)を認定しました。

このように、裁判では、個別事案に応じて労働能力喪失率や労働能力喪失期間を判断しています。

 

 

ライプニッツ係数

ライプニッツ係数を乗じるのは、中間利息を控除するためです。

ライプニッツ係数についてはこちらをどうぞ。

 

 

個人事業主・会社役員の逸失利益の計算例

具体例 37歳の自営業者が交通事故で後遺障害が残り、第8級7号に認定された場合

年齢:37歳自営業
後遺障害:第8級7号
基礎収入:前年の確定申告額 1500万円
労働能力喪失率:45%
就業可能年数:30年(67歳 – 37歳)
ライプニッツ係数:15.372


結果1500万円 × 0.45 × 15.372 ≒ 1億300万円が逸失利益になります。

なお、後遺障害等級8級の自賠責保険金の上限は 819万円です。

自賠責保険からの支払い後の残金は、加害者の任意保険や自己負担となります。

弁護士鈴木啓太このように、基礎収入や労働能力喪失率、労働能力喪失期間の算定には複雑な問題が多く含まれています。

詳しくは交通事故に専門特化した弁護士へご相談ください。

ご相談の流れはこちらをご覧ください。

 

 

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逸失利益
   
執筆者
弁護士 鈴木啓太

弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

所属 / 福岡県弁護士会

保有資格 / 弁護士

専門領域 / 個人分野:交通事故を中心とした人身障害事件 法人分野:労働問題  

実績紹介 / 交通事故の相談件数年間300件超え(2019年)を誇るデイライト法律事務所のパートナー弁護士。交通事故分野において、他士業や整骨院、一般市民向けのセミナー講師も務めた。



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