飲酒運転の車に交通事故を起こされました。運転者だけでなく一緒に酒を飲んだ人にも責任追求ができますか?

飲酒運転と知った上で、運転者に運転をさせたような場合には、民事上、共同不法行為者(民法719条1項)または幇助者(民法719条2項)として責任を追及できる場合があります。
福岡では、海の中道大橋での飲酒運転事故で、幼い3人の子の命が失われています。このような交通事故が起きないよう、飲酒運転を勧めるような行為は許されません。
したがって、飲酒運転の自動車と交通事故にあった場合には、同乗者への請求も含めて、弁護士にご相談の上、判断されるのが望ましいでしょう。
飲酒運転の同乗者の責任について、以下で詳しく解説いたします。
目次
飲酒運転への社会的非難の強まり
現在は、飲酒運転に対する社会的な非難が強くなっています。先ほどの福岡での交通事故がそのきっかけになりました。
飲酒運転は極めて危険な行為で、発覚すればそれ自体で現行犯逮捕されるほどの犯罪ですが、加害運転手と一緒にお酒を飲んだ人、すすめた人にも責任がないのかという点がこれまでも問題になってきました。
民事上の責任である損害賠償責任について
加害運転手と一緒にお酒を飲んでいたまたはすすめた人が共同不法行為者、幇助者として、責任があると判断される理由としては、加害運転手の飲酒を制止すべき注意義務を怠ったと評価されるからです。
したがって、飲酒及びその後の運転を制止すべき注意義務があったといえるかどうかが問題になります。
- 加害運転手が飲酒後自動車を運転することを知っていた
- 一緒に飲酒をした時間と飲酒の量
- 加害運転手が酒に酔い、まともに運転できないと分かっていた
- 加害運転手との人的関係性
- 加害運転手の運転する車への同乗の有無といきさつ
実際の事例で、飲酒を制止すべき注意義務が認められるかどうかは、以上の事情などから総合的に判断されます。
共に飲酒をした人が同乗した場合
過去には以下の事例で飲酒をすすめた人にも責任が認められました。
判例 飲酒を制止すべき注意義務ありとした裁判例
- 最高裁 昭和43年4月26日判決
- 大阪地裁 平成12年11月21日判決
- 東京地裁 平成15年5月8日判決
- 仙台地裁 平成19年10月31日判決
その主な理由としては、以下のような事情が挙げられています。
- 加害運転手が飲酒後自動車を運転することを知っていていながら酒をすすめた
- 加害運転手が酒に酔い、まともに運転できないと分かっていたのに運転を止めなかった
- 加害運転手との人的関係性(元上司)を利用して自分の自宅へ送らせた
- 自宅や宿泊先へ送迎させた、または依頼した
反対に、以下の事例では注意義務を認めず、民事上の責任はないと判断されています。
判例 注意義務を否定した裁判例
- 京都地裁 昭和61月1月30日判決
- 東京地裁 平成18年2月22日判決
- 加害運転手が飲酒後自動車を運転することをわかる状況ではなかった
- 酒を提供したり積極的にすすめたりしたわけではない
- 同乗は運転手から勧めた、または同乗者の自宅まで送るよう頼んでいない
- 運転手に酔っぱらった様子はなかった
共に飲酒をした人が同乗していない場合
判例 同乗していないものの責任を認めた事例
- 加害運転手が飲酒後自動車を運転することを知っていた
- 加害運転手が酒に酔ったのを知っていながら、はしご酒にさらに付き合った
という理由から同乗していない場合でも、共同不行為者または幇助者の責任を認めました。
【福島地裁 昭和51年2月6日判決】
他方で、責任を否定した事例もあります。
判例 責任を否定した事例
この事例では、酒を提供したバーテンダーが事故の発生を予見できたと言えないと判断されています。
【東京地裁 平成16年2月26日判決】
加害運転手より先に帰宅した運転手同僚の事例で、先に帰宅した同僚には、運転手が自動車を運転する認識はなかったと結論づけています。
【東京地裁 平成16年3月29日判決】
飲酒運転の被害者が適切な補償を得るため
交通事故にあうということ自体が被害者にとって、大変な肉体的、精神的な負担を強いるものです。
それに加えて、飲酒運転の自動車と交通事故にあうというのは、被害者としては、到底納得できるものではないと思います。
場合によっては、今回の設例のように、同乗者や一緒にお酒を飲んでいた人にも損害賠償請求をしたいというお気持ちになることもあろうかと思います。
飲酒運転での交通事故の場合は、基本の過失相殺にも影響を与える可能性がありますし、慰謝料の増額事由になる可能性もあります。
もっとも、被害者の方が自ら保険会社などと示談交渉しても、慰謝料はなかなか増額してくれません。
飲酒運転の被害者が適切な補償を得るために、まずは一度、当事務所までご相談ください。
