交通事故のケガを我慢して通院しなかった。慰謝料は上乗せされる?

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

自動車賠償責任保険の慰謝料は、通院期間、または実通院日数が基準となります。

そのため、結論から申し上げると、通院を我慢した場合は、慰謝料が上乗せされるどころか、減額される可能性が高いです。

以下、詳しく解説いたします。

事案の例

例えば、Aさん(兼業主婦)が車両を運転し信号待ちをしている際、相手自動車に追突され、むちうちを受傷したという事案があったとします。

Aさんは、交通事故の直後に通院をし後、首に痛みはありましたが、家事やパートが忙しく病院へは行けず、痛みを我慢していました。

交通事故から1か月間後症状固定しました(通院期間30日、実通院日数2日)。

通院期間、実通院日数について

通院期間とは、事故日から最終通院日までの日数のことを指します。

例えば、事故日が11月15日で、最終通院日が12月14日だったとします。

→この場合、通院期間は、30日となります。

実通院日数とは、文字通り、実際に通院した日数になります。

上記の例で、実際に通院したのは、11月16日(事故の翌日)と12月14日だったとします。

→この場合の実通院日数は、2日となります。

Aさんは、保険会社から慰謝料の提示を受けましたが、その慰謝料の金額に不満とのことでした。

Aさんの提示された慰謝料金額 4300円 × 実通院日数2日 × 2 = 1万7200円

この金額は、いわゆる自賠責基準の計算です。自賠責基準の計算方法は以下で述べます。

 

 

慰謝料とは

慰謝料とは精神的損害に対する金銭賠償のことです。

交通事故など第三者の故意・過失によってケガを負った場合には、加害者に対して傷害慰謝料を請求することができます。

この傷害慰謝料とは、交通事故等の第三者の加害行為によって負傷し、入通院した場合に発生する損害賠償金です。

ここでいう傷害とは身体的に毀損された場合はもちろんのこと、精神的・心理的な毀損や内部的な疾患を生じた場合も含まれています。

 

 

傷害慰謝料の算定方法

傷害慰謝料の算定基準は、自賠責保険基準、任意保険会社基準、裁判基準の3つがありますが、いずれの基準に基づいても、「痛みを我慢していたこと」は慰謝料の算定にあたって加味されません

自賠責基準

自賠責基準の1日単価は、4300円(令和2年4月1日以降の事故の場合、令和2年3月31日までに起きた事故の場合は4200円)です。

そして、上記の1日単価に、通院期間もしくは実通院日数の2倍の数の、どちらか少ない方をかけ算出ます。

具体例 通院期間が100日、そのうち実通院日数が30日だった場合

100日 > 60日(30日 × 2)

この場合は、少ない方の60日を乗じることになります。

すなわち、4300円×60日=25万8000円が自賠責基準の傷害慰謝料となります。

 

任意保険会社の基準

任意保険会社の基準は、任意保険会社の各社が内部的に規定している基準です。

公表がなされていないため、事前に把握することは難しいです。

 

 

裁判基準

日弁連交通事故相談センター東京支部が作成した「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(「赤い本」と呼ばれています。)掲載の「入通院慰謝料の算定表」を基準として、事案ごとの個別事情を加味しながら慰謝料金額が算定されています。

関連:赤い本 「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」|日弁連交通事故相談センター東京支部

一般的に、裁判基準の方が、自賠責基準や任意保険会社の基準よりも高額になることが多いです。

裁判基準は、基本的には通院期間を基準にしますが、実通院日数が少ない場合には、実通院日数の3ないし3.5倍を通院期間の目安にします。

弁護士が慰謝料を算定する際は、裁判基準で算定し、この基準で保険会社と交渉することになります。

保険会社の慰謝料基準と比較しても裁判所基準が最も高い水準となります。

しかしながら、この裁判基準も通院期間・日数を基準に慰謝料を算出します。

したがって、設例の事案のように痛みを我慢して通院していないという場合には、慰謝料は受け取ることができなくなりますので、早めに医療機関への受診をするようにしてください。

 

 

慰謝料の増額事由

腰を痛めた男性上記のとおり、傷害慰謝料は、通院期間や日数で算出しますが、各個別事情に応じて、増額されることもあります。

以下のような事由がある場合には、慰謝料が増額されることがありますが、「痛みを我慢していた」という事情は慰謝料の増額事由にもならないと考えられます。

加害者側の事情
  • 飲酒・酒気帯び運転
  • ひき逃げ事故
  • ことさらに信号無視した場合
  • 大幅なスピード違反
  • 加害者の態度が著しく不誠実
被害者側の事情
  • 何度も手術をせざるを得なくなった
  • 生命が危ぶまれるような状態になった
  • 麻酔ができない状態で手術をした

 

 

まとめ

以上のとおり、交通事故の傷害慰謝料に関しては、自賠責基準や裁判基準において、通院期間や実通院日数を主に考慮され算定されます。

「痛みを我慢していた」ということは、慰謝料算定にあたり考慮されないと考えるべきでしょう。

交通事故に遭い、怪我をした場合には、医師の指示に従い確実に通院を継続するようにする必要があります。

 

 

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