厚生年金を受給していた夫が交通事故で死亡。遺族年金はもらえる?

執筆者:弁護士 木曽賢也 (弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士)

弁護士の回答

年金の被保険者が交通事故で死亡した場合であっても、遺族厚生年金の支給要件に該当する可能性があります。

その他、保険料納付要件や支払い対象者に該当すれば、遺族厚生年金は支給されます。

 

遺族厚生年金

支払要件

次の要件のいずれかに該当するときに受給権が発生します。

保険者に関する要件(厚生年金保険法58条)

  1. ① 被保険者が、死亡したとき
  2. ② 資格喪失後に、被保険者であった間に初診日がある傷病により当該初診日から起算して5年以内に死亡したとき
  3. ③ 障害等級の1級・2級に該当する障がいの状態にある障害厚生年金の受給権者が死亡したとき
  4. ④ 老齢厚生年金の受給権者または老齢厚生年金の資格期間を満たした者が死亡したとき

 

保険料納付に関する要件

基本的に事業主が被保険者の給与から天引きされるので、未納は発生しません。

そして、支払要件のうち、①や②に該当する場合は、納付要件として以下のものが定められています。

  1. 死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が、被保険者期間の3分の2以上あること。
  2. 令和8年4月1日より前に亡くなった場合は、死亡日の属する月の前々月までの1年間に保険料の滞納がないこと。

 

支給対象者

遺族厚生年金の支給対象者は「被保険者または被保険者であった者の配偶者、子、父母、孫または祖父母」です(厚生年金保険法59条1項)。

遺族厚生年金は、次の順位に応じて支給されます。

1位 配偶者(※1)及び子(※2)

2位 父母(※3)

3位 (※2)

4位 祖父母(※3)

上位者に該当する者が生存している場合、他の遺族は受給できません。

(※1)配偶者が夫の場合、妻の死亡当時55歳以上という年齢要件が必要です。また、支給開始は60歳からになります。
(※2)子、孫については、①18歳到達年度の年度末(3月31日)を経過していない者、または②20歳未満で障害年金の障害等級1級もしくは2級の障害者に限られます。
(※3)父母、祖父母については、55歳以上という年齢要件が必要です。また、支給開始は60歳からになります。

 

遺族基礎年金との併給

子のある配偶者、子(18歳到達年度の年度末を経過していない者または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級に該当する障害者に限る)は、遺族基礎年金も併せて受け取ることができます。

 

 

遺族厚生年金の額

遺族厚生年金は、次のように計算します。

報酬比例部分 +(中高齢寡婦加算)

報酬比例部分の算出(令和2年4月分から)

報酬比例部分は、下記①式によって算出した額になります。

①式

 

ただし、②式によって額より下回る場合は、②式によって算出した額が報酬比例部分になります。

②式

平均標準報酬月額
平成15年3月までの被保険者期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額の総額を、平成15年3月までの被保険者期間の月数で除して得た額。
平均標準報酬額
平成15年4月以後の被保険者期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、平成15年4月以後の被保険者期間の月数で除して得た額(賞与含めた平均月収)。

 

寡婦加算額の算出

妻が受ける遺族厚生年金には、40歳から65歳になるまで58万6300円(年額)加算されます。

寡婦加算額が加算されるのは、生計を同じにしている子(※4)がいない、遺族基礎年金を受給できなくなったなどの要件に該当するときです。

(※4)子については、①18歳到達年度の年度末(3月31日)を経過していない者、または②20歳未満で障害年金の障害等級1級もしくは2級の障害者に限られます。

 

 

遺族厚生年金の損益相殺

損害の二重取りはできないという考え方から、遺族基礎年金の受給額と加害者側から回収する損害賠償金との間で調整が図られます。

これを損益相殺といいます。

ただし、遺族厚生年金の損益相殺ができる範囲は、死亡による逸失利益に限定されています(最判H11.10.22、最判H16.12.20)。

 

 

積極損害


 
賠償金の計算方法



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