交通事故で家族を亡くした場合、健康保険からの保証の内容は?
健康保険から埋葬料・埋葬費または家族埋葬料が支給されます。
※相手方(相手方保険会社も含む)からの埋葬料・埋葬費、家族埋葬料と二重取りできるわけではありません。
埋葬料・埋葬費とは
埋葬料・埋葬費は給付されるのは、業務や通勤中以外の事故で被害者が死亡した場合です。
業務や通勤中の事故の場合は、労災の対象です。
埋葬料
埋葬料は、亡くなった被害者に生計を維持されていて、埋葬を行う人へ支給されます。
生計を維持されていたとは、亡くなった被害者によって生計の全部又は一部を維持されている人で、民法上の親族や遺族でなくても構いません。
また、亡くなった被害者が世帯主であるか、同一世帯であるかも問われません。
さらに、埋葬料に関しては、死亡の事実等が確認されれば支給されるため、実際に埋葬があったことは要件とされていません。
埋葬費
埋葬費は、埋葬料を受け取る人がいない場合で、埋葬を行った人に実際に埋葬に要した費用が支給されます。
実際に埋葬に要した費用とは、霊柩車代、運搬代、供物代、火葬料、お布施などが対象です。
家族埋葬料
家族埋葬料とは、扶養していた人が亡くなったとき、健康保険の被保険者に支給されます。
資格喪失後の埋葬料・埋葬費
被保険者が健康保険の資格喪失後に亡くなった場合でも、次のいずれかに該当する場合は、埋葬料・埋葬費が支給されます。
- ① 被保険者だった方が資格喪失後3ヶ月以内に亡くなった場合
- ② 被保険者だった方が資格喪失後の傷病手当金または出産手当金の継続給付を受けている間に亡くなった時、もしくは当該継続給付を受けなくなってから3ヶ月以内に亡くなった時
なお、被保険者の資格喪失後に被扶養者のご家族が亡くなっても、家族埋葬料は支給されません。
支給額
埋葬料、家族埋葬料は、5万円が支給されます。
埋葬費は埋葬料の範囲(5万円)内で実際に支出した額が支給されます。
申請の手続
指定の申請書などを協会けんぽに提出する必要があります。
申請書は、協会けんぽのホームページに掲載されています。
参考:全国健康保険協会
例外的取り扱い
健康保険の給付制限
健康保険では、被保険者が故意の犯罪行為または故意に健康保険給付事由を発生させたときには、保険給付されません。
また、国民健康保険でも、故意の犯罪行為または故意に疾病に罹患または受傷したときは療養の給付は行われません。
なお、故意の犯罪行為により生じた事故とは、その行為の遂行中に交通事故が発生したという関係があるだけでなく、その行為が保険事故発生の主たる原因であるという相当因果関係が両者の間にあることが必要とされています(S35.4.27保文発 3030)。
例えば交通事故では、以下の場合に保険給付が制限されます(健康保険法116条)。
- 飲酒、麻薬等の運転による運転
- 無免許運転
- 法定速度を大幅に超過した運転等
- 刑法及び道路交通法等に違反したことが原因で引き起こされた交通事故
また、故意の犯罪行為により生じた事故の傷病で、健康保険を利用して医療機関で治療を受けていても、その後返還請求を受けることがあります。
埋葬料の例外的扱い
刑法及び道路交通法に違反したことが原因で引き起こされた交通事故により死亡した場合であっても、埋葬料については給付を受けられます(S36.7.5保険発63の2)。
なぜなら、死亡は最終的な1回限りのものであり、埋葬料の支給には死亡した者に生活を依存していた人が埋葬を行うとき、埋葬を行う人を救済または弔慰することを目的として支給されるからです。