弁護士費用特約は家族も使用できる?適用範囲を解説

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

弁護士費用特約とは

弁護士費用特約とは、交通事故に遭った場合に相手方との交渉や裁判等を弁護士に依頼する際の費用を保険会社が被害者の方に代わって支払うという保険です。

つまり、被害者の方は、自己負担なく交通事故に対する対応を弁護士に依頼することができるということです(なお、保険金額には 300万円の上限金が定められていることがほとんどです。)。

この弁護士費用特約は、被害者が本来負担する弁護士費用を保険会社が負担するものですので、交通事故の加害者が加入しているかどうかではなく、被害者の側で弁護士費用特約に加入しているかどうかをチェックする必要があります。

また、交通事故の時点で、この特約に加入しているということが使用条件になります。

つまり、交通事故にあった後で弁護士費用特約をオプションでつけたとしても、交通事故の時点で、弁護士費用特約に加入していない以上、使用はできません。

 

 

弁護士費用特約は家族も使える?適用範囲について

弁護士費用特約は、自動車保険を契約している契約者(被保険者)のみだけではなく、家族や同乗者も使用することができます。

弁護士費用特約の補償対象は以下のとおりです。

弁護士費用特約の補償対象
  1. ① 契約者(被保険者)本人
  2. ② 契約者(被保険者)の配偶者
  3. ③ 契約者(被保険者)の同居の親族
    (例)同居中の父母、兄弟姉妹、子、配偶者の親族
  4. ④ 契約者(被保険者)の別居未婚の子
    (例)実家を出て暮らしている結婚していない子ども
  5. ⑤ 契約車に搭乗中の者
  6. ⑥ 契約車の所有者

また、この特約は、自動車を運転しているときの交通事故以外にも、歩行者や自転車で通行中に自動車に跳ねられた場合でも使用することができます。

加えて、見落としがちなのが、ご自宅の火災保険に付帯されている弁護士費用特約が、交通事故において使用できる場合があります。

逆に、保険会社によっては、お勤め先の車で移動中の事故(労災案件)の場合は、特約を使用できないとされていることもあります。

具体的に、どのような態様の交通事故に使用できるかについては、それぞれの保険会社ごとに異なっています。

保険の担当者自身もよく把握できていないケースもあり、実際に使用できるにもかかわらず、担当者からは「使用できない」と回答されることもあります。

そのため、弁護士費用特約を使用できるかどうかは、保険の約款をよく見て確認することが大切です。

わからなければ、弁護士がご相談時に確認することも可能です。

交通事故に遭った自動車の弁護士費用特約が使用できないか、上記1〜6のケースにあてはまらないかをチェックしていただければと思います。

弁護士費用特約は非常に便利な保険です。この特約を使用して弁護士に依頼された方もたくさんいらっしゃいます。

なお、自動車保険の記名保険者やその家族については、歩行中の自動車事故でも利用することができます。

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弁護士費用特約が使用できないケース

保険会社によって異なることもありますが、以下のような場合には、弁護士費用特約は使用できません。

  • 無免許運転、酒気帯び運転、麻薬等の使用等の運転による事故
  • 事業用自動車を運転している場合に発生した事故
  • 地震、台風、津波などによる事故
  • 闘争行為、自殺行為、犯罪行為によって発生した事故
  • 同居の親族や配偶者が相手方となる場合
  • 故意又は極めて重大な過失がある場合

 

弁護士費用特約を使用する流れ

①弁護士の選任

まずは弁護士を選任することから始まります。

弁護士の選び方は様々です。

例えば、インターネットで検索する、知人から紹介してもらう等があります。

ただし、交通事故は、医学的要素等の専門的知識が必要な分野ですので、交通事故に精通した弁護士に依頼することをおすすめします。

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②保険会社に連絡

依頼する弁護士が決まりましたら、ご加入の保険会社に弁護士費用特約を使用する旨をお電話等で連絡します。

ご連絡する際は、保険会社に対し、依頼する弁護士の名前、法律事務所名、法律事務所の電話番号をお伝えする必要があります。

 

弁護士費用特約で支払われる範囲

弁護士費用特約の支払い範囲は、多くの場合、以下のとおりです。

  1. 着手金、報酬金(タイムチャージ制の場合は、タイムチャージの料金)
  2. 実費費用(郵送代、コピー代、実況見分調書の取得費用、カルテの取得費用等)
  3. 弁護士の日当

 

 

弁護士費用特約を使用するメリット

弁護士費用を保険でまかなえる

弁護士費用は高額になることが多いですが、それを保険でまかなうことができることが弁護士費用特約の最大のメリットです。

限度額300万円の範囲であれば、弁護士費用の全てをまかなえることがほとんどです。

ただし、事案の内容や弁護士によっては、追加の費用が必要になることもありますので、事前に弁護士に確認されておいた方がいいでしょう。

 

弁護士費用特約を使用すると保険料が上がる?

自動車保険を使用すると翌年の保険料が上がるため、弁護士費用特約を使用した場合にも保険料が上がると思われている方もいらっしゃいます。

しかし、弁護士費用特約を使用したとしても、等級には影響しませんし、保険料が上がることもありません。

 

 

軽傷でも弁護士費用特約を使用してもいい?

被害者に方の中には、ケガが大したことないという理由で、遠慮して弁護士費用特約を使わず、弁護士にも依頼されない方もいるかもしれません。

しかし、軽傷であっても、当然、弁護士費用特約は使用して構いません。

弁護士に依頼することで、保険会社への対応をしなくてよくなるなどのメリットもあります。

 

火災保険に弁護士費用特約?

火災保険に弁護士費用特約がついており、交通事故でも使用できる場合があります。

よく見落とされがちなので、ご自身の火災保険をご確認されることをお勧めします。

 

まとめ

以上のとおり、弁護士費用特約は、自動車保険を契約している契約者(被保険者)のみだけではなく、家族や同乗者も使用することができ、非常に使い勝手がよく交通事故被害者にとってメリットが大きい保険特約です。

加入されている場合には、使用されることをお勧めします。

なお、弁護士費用特約は、保険の担当者自身もよく把握できていないケースもあり、実際に使用できるにもかかわらず、保険代理店などから「使用できない」と回答されることもあります。

そのため、弁護士費用特約を使用できるかどうかは、保険の約款をよく見て確認することが大切です。

分からなければ、弁護士に相談されることをお勧めします。

 

 

 

 

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