交通事故に遭いました。加害者はどのような罪になる?
自動車の運転に必要な注意を怠って事故を起こし他人を死傷させた場合、自動車運転過失致死傷罪に問われる可能性があります。
自動車運転過失致死傷罪の刑罰は、7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金と定められています。
さらに加害者の悪質性が高い場合は、危険運転過失致死傷罪に問われる可能性があります。
危険運転過失致死傷罪の刑罰は、人を負傷させた場合が15年以下の懲役、人を死亡させた場合が1年以上の懲役と定められています。
目次
自動車運転過失致死傷罪
自動車運転過失致死傷罪とは、自動車の運転手が運転に必要な注意を怠って事故を起こし、他人を死傷させた場合に負う刑事責任です。
平成26年5月20日施行された「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、自動車運転死傷行為処罰法とする)」の第5条に定められています。
刑罰は、7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金、無免許運転の場合は10年以下の懲役となります。
傷害の軽い時は情状により刑を免除することができます(自動車運転死傷行為処罰法第5条ただし書)。
しかし、罪が必ず免除される訳ではありません。
「自動車の運転上必要な注意を怠り」とは
交通事故を起こせば、すべて処罰されるわけではありません。
自動車運転過失致死傷罪が成立するためには、加害者の行為が、「自動車の運転上必要な注意を怠り」という要件に該当する必要があります。
「自動車の運転上必要な注意を怠り」とは、過失のことです。
この過失には、事故の発生に対する予見義務と、結果に対する回避義務があります。
過失運転致死傷罪自動車運転過失致死傷罪は、事故の発生を予見し事故を回避すべき運転上の注意義務があったにもかかわらず、この義務を怠って事故起こすと成立する犯罪です。
事故の発生に対する予見義務
事故の発生に対する予見義務(結果予見義務)の具体例として、道路上に多くの幼児や児童がいるとき、幼児や児童が路上に飛び出すことや路面が濡れているアスファルト舗装道路にある鉄板の上を走行するとき、不用意に急ブレーキをかけた場合、ハンドルが取られることが挙げられます。
結果に対する回避義務
結果に対する回避義務には、具体的な予見以前の結果回避義務と予見後の結果回避義務があります。
具体的な予見以前の結果回避義務について、酒酔い、居眠り、過労運転や故障・不整備車両の運転速度超過、運転技量を未熟などがその義務違反とされます。
具体的な予見後の結果回避義務の具体例として、子供の飛び出しが想定される場合、徐行やブレーキを操作できるよう態勢をとるなどが挙げられます。
危険運転致死傷罪
危険運転過失致死傷罪は、自動車運転死傷行為処罰法第2条1号〜6号と第3条に定められています。
第2条
1号 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
2号 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
3号 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
4号 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
5号 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
6号 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
第3条
1項 アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は十二年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は十五年以下の懲役に処する。
2項 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。
刑について
過失運転致死傷罪で問われる刑は懲役、禁錮、罰金です。
危険運転致死傷罪で問われる刑は懲役です。
懲役、禁錮
懲役刑や禁固刑は身柄を刑務所に拘置され、身体の自由が奪われる刑です。
懲役刑と禁錮刑の違いは、懲役刑は刑務作業があるのに対して禁固刑は刑務作業がありません。
禁錮刑受刑者が請願によって刑務作業に就くことは認められます。
罰金
罰金刑は金銭の支払いを命じる刑罰です。
罰金を完納することができない場合、労役場に留置されます(刑法18条)。
執行猶予
なお3年以下の懲役刑・禁錮刑、50万円以下の罰金刑には執行猶予がつくことがあります。
民事の損害賠償について、詳しくはこちらをどうぞ。