自動車保険の免責事由について【弁護士が解説】

執筆者:弁護士 西村裕一 (弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士)

自動車保険に加入している自動車が交通事故により損害が生じた場合であっても、免責事由に該当する場合には、保険金が支払われません。

交通事故専門の弁護士が対人賠償責任保険の免責事由について解説します。

対人賠償責任保険は、人身事故を起こした加害者の被害者に対する賠償債務を填補する保険です。

 

交通事故の発生原因による免責事由

事故の発生原因による免責事由には、故意免責、異常免責などがあります。

故意免責

保険契約者や被保険者が、故意に起こした事故の損害に対しては、自動車保険の支払いはありません。

故意に起こした事故について、保険金の支払いを認めると違法な保険金請求を助長する可能性があるからです。

人身傷害保険や無保険車傷害保険においては、故意だけではなく「重過失」で起こした事故も免責となります。

交通事故における重過失について、詳しくはこちらをご覧ください。

自賠責保険・共済も故意による事故は免責とされています。

ただし、自賠責保険・共済では、「悪意によって生じた損害」(自賠法14条)について免責されるとされています。

ここでいうところの「悪意によって」は、確定的な故意を指し、未必の故意(積極的に事故を起こす意図はないものの、事故を起こすことを容認していたような場合)は含まれていません。

したがって、自賠責保険・共済の場合には、未必の故意では免責事由にはなりません。

対人賠償責任保険では、未必の故意の場合も免責事由になることがあります。

例えば、車を運転していて、人にケガを負わせるかもしれないが、それもやむを得ないと考えて、車を進行させ、人にケガを負わせた場合は、免責事由となります。

他方で、車を運転していて、人にケガを負わせるかもしれないが、それもやむを得ない(人が死ぬことまでは予期していない)と考えて、車を進行させ、人を死亡させた場合は、死亡に関する損害は免責にはなりません。

人が死亡してもやむを得ないとまでは考えていないことから、死亡に関しては未必の故意が認められないため、免責されないのです。

異常免責

以下の原因で発生した事故を異常免責といいます。

  • 戦争や外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱、その他これに類似の事変、暴動
  • 地震もしくは噴火、またはこれらによる津波
  • 核燃料物質もしくは核燃料物質によって汚染された物の放射性、爆発性、その他有害な特性またはこれら特性に起因する事故、これら以外の放射能の照射または放射能の汚染による事故
  • 地震・津波・放射能事故等の事由に随伴して発生した事故、秩序の混乱によって発生した事故
  • 競技、曲芸、試験
    自動車を使用した曲芸やレース、試験などの事故による損害は任意自動車保険の支払いの対象外です。
  • 積載危険物
    契約対象となる自動車に業務として危険物を積載したことに発生した損害も免責となります。

 

 

対人賠償責任保険固有の免責事由

上記に加えて、対人賠償責任保険では、被保険者と一定の関係にある人が被る損害について保険金が支払われません。

具体的には、以下の関係にある人に対する保険金の支払いはなされません。

記名被保険者
記名被保険者とは、契約の車を主に運転する人です。
被保険自動車を運転中の者、その父母、、配偶者、子
「被保険自動車」とは、保険契約の対象とされている車です。
「父母」は、実父母、養父母を含みますが、義理の父母は含みません。
「配偶者」には内縁の夫、妻を含みます。
「子」には、実子、養子を含みます。
被保険者の父母、配偶者、子
「被保険者」とは、補償の対象となっている人です。
被保険者の業務に従事中の使用人
被保険者の使用者の業務に従事中の他の使用人
ただし、被保険者が被保険自動車をその使用者の業務に使用している場合に限る。
「被保険者の使用者の業務に従事中の他の使用人」とは、簡単に言うと被保険者の同僚です。

 

 

保険契約上の義務違反による場合

保険契約時の告知・通告義務違反、保険契約後の被保険自動車の用途車種・登録番号の変更などの通知しない義務違反、事故発生時の義務違反(事故時通知義務、損害の拡大防止義務、書類提出の義務など)があった場合は、免責とされています。

なお、重大な義務違反は任意自動車保険の解除事由となります。

 

 

保険契約の合意による場合

運転者限定特約や年齢条件特約を任意自動車保険に付帯したとき、事故車両の運転手や年齢に条件違反があった場合は免責となります。

免責事由に該当する場合には、保険金が一切支払われないことになります。

したがって、万一、保険会社から免責を主張された場合には、一度専門の弁護士に相談されることをお勧めします。

 

 

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