よくある相談Q&A

事故当時に身体的・精神的に病気があった場合、賠償金は減額される?


掲載日: 2016年2月10日|最終更新日:2020年2月10日

事故当時、被害者に身体的・体質的あるいは精神的に疾患が有り、その疾患が原因で損害が拡大したような場合には、その拡大部分については、被害者の自己責任として賠償金額が減額されることがあります。

これを法的な言葉でいうと素因減額といいます。

被害者の方としては納得できない減額かと思いますが、事故だけが原因ではなく、もともと被害者の方がもっていた病気等が原因で損害が拡大しているような場合には、その損害の全てを加害者に負わせることは公平ではないと裁判所は考えているようです。

以下では、素因減額を肯定・否定した裁判例をご紹介します。

減額肯定例

被害者に特異な性格があった事案

入院被害者は、事故により外傷性頭部症候群(むち打ち)等の傷害を負い、通常であれば3ヶ月程で通常の生活に戻れるところ、被害者の特異な性格が起因して10年以上入通院を繰り返した事案です。

最高裁判所は、事故後3年間に関する部分について事故との因果関係を認めたうえで、事故後3年間に発生した損害のうち40%の限度で素因減額を認めました。(最判S63.4.21)

 

過去に一酸化炭素中毒に罹患していた事案

被害者は、過去に一酸化炭素中毒に罹患していたものの、事故当時においては、潜在化ないし消失していたところ、事故による頭部打撲により、顕在化発現してしまい、次第に症状が悪化し死亡した事案について、最高裁判所は、50%の素因減額を認めています(最判H4.6.25)

 

以前にも交通事故に遭い既存障害があった事案

被害者は、1度目の交通事故で頚部痛等14級の後遺障害の認定を受けた後、約6年10ヶ月後に2度目の交通事故で頚部捻挫等の傷害を負った事案で、既存傷害を理由に40%の素因減額を認めました。(神戸地判H26.6.27)

 

既往症であるうつ病を患っていた事案

医師被害者(事故当時55歳)が、事故により頚部捻挫等14級の後遺障害を負った事案で、神戸地裁は、被害者が50歳頃からうつ病と診断されて頻繁に治療を継続していたこと、その訴える症状には受傷状況や受傷内容に照らして整合しないものが含まれていることなどから、治療が長期に及んだのがうつ病の心因的要因が少なからず影響していたとして、10%の素因減額を認めました。(神戸地判H26.8.20)

 

 

減額否定例

首が一般の人よりも長く頸椎不安定症であった事案

首を怪我した女性のイラスト首が一般人の平均よりも長く、頸椎不安定症がある被害者については、素因減額を否定しています。

この事案で最高裁判所は、被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても、それが疾患に当たらない場合には、特段の事情の存しないかぎり、素因減額の対象とはしないと判断しています。

ここでいうところの「特段の事情」については、極端な肥満などで通常人の平均値から著しくかけ離れた身体的特徴を有する者が、転倒などによって重大な障害を被りかねないことから、日常生活において通常人に比べてより慎重な行動をとることが求められているよう場合という旨を判示しています。

この最高裁判判例から分かるように、単に一般の人に比べて身体的・体質的に異なる特徴があったとしても、直ちに素因減額の対象となることはありません。(最判H8.10.29)

 

妊娠中に事故に遭った事案

妊娠自体は疾患に当たらないことはもちろん、一時的な生理的現象ともいうべきであるとして素因減額を否定しました。(東京地判H15.12.8)

 

年相応の骨密度の低下があった事案

事故当時62歳の女性について、同年代の女性相応の骨密度が低下していることが認められたが、それを超えて骨粗鬆症とまではいえないとして素因減額を否定しました。(大阪地判H15.2.20)

 

被害者が高齢であることに加え既往症があった事案

デイサービス送迎中の事故で、被害者は事故時に98歳であり、既往症(腸穿孔、直腸脱等)があった事案で、大阪地裁は素因減額を否定しました。(大阪地判H23.3.28)

 

 

終わりに

素因減額については、過失割合のように判例で類型化されているものではありません。

各事案により素因減額の可否や減額されるとしてもその割合の程度によっては異なってきます。

素因減額がなされると、得られる賠償金が大幅に減ってしまう可能性もあります。

加害者側から素因減額を主張されお困りの方は、専門家の弁護士に相談することをお勧めします。

 

 

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