追突事故で被害者が損しないために知っておくべき5つのポイント

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

追突事故は、事故状況の中で発生件数が多い事故態様の一つです。

この記事では、追突事故に遭った場合に、被害者が押さえておくべきポイントについて解説しています。

 

追突事故の過失割合 被害者は原則0%

追突事故は、車を駐停車していたところに後方から衝突される事故です。

駐停車しているところに、後方から追突されるので、被害者としては事故を避けようがなく、何の落ち度もありません。

したがって、原則として、追突された被害者の過失割合は0%です。

もっとも、駐車禁止場所に駐車している場合や、前方の視認状況が悪い中でハザードを灯さずに駐車しているような場合には、過失割合が修正され10〜20%の過失が生じる場合もあります。

ただし、単に、信号停車あるいは前方が渋滞していて停車している時に追突され事故であれば、ほとんどの場合、被害者の過失は0%と考えていいでしょう。

万一、保険会社が被害者の過失を主張してきた場合には、その理由をよく聞いて弁護士に相談されることをお勧めします。

 

 

加入している保険会社に交渉してもらえない

自動車保険には、示談代行サービスがついており、被害者に代わって相手保険会社や加害者と交渉してくれるサービスがあります。

しかし、追突事故で過失割合が10 :0の場合には、この示談代行サービスを利用することはできず、被害者が全ての交渉を行わなければなりません。

被害者に過失が少しでもあれば、被害者の保険会社も賠償金を支払わなければならい可能性があり、利害関係があるため、加害者側と交渉できるのですが、被害者の過失が0%の場合には、利害関係が全くないので交渉することができないのです。

したがって、被害者は、車の修理代等の賠償について自分で交渉しなければなりません。

車の損害賠償は、車の時価額の問題や、買換諸費用、評価損の問題など専門的な知識が必要となるため、弁護士に依頼することも検討すべきでしょう。

自動車保険に弁護士費用特約が付いている場合には、弁護士費用を一切負担なく、弁護士に依頼できる場合もあるため、自分の保険に弁護士費用特約がないか確認されてください。

 

 

痛みがあれば必ず病院に行く

追突事故に遭って、体に痛みがあっても、すぐに治ると考え、病院に行かない被害者の方もいます。

痛みがすぐに完治すればいいのですが、なかなか治らなかったときが大変です。

時間が経過してから、やっぱり痛みがあるから病院へ行くと保険会社に言っても、時間の経過を理由に治療費を支払ってくれない可能性があります。

したがって、追突事故に遭って痛みがあれば、すぐに病院を受診しましょう。

病院に行くべき理由はもう1つあります。

交通事故の傷害慰謝料の算定方法は、病院への通院期間・日数で算出されます。

したがって、1度も病院に行っていない場合には、傷害慰謝料は請求できないと思われて下さい。

仕事が忙しくて、痛みに耐えながら仕事をしたという場合でも慰謝料は出ません。くれぐれも気を付けてください。

整骨院に通院される場合もあると思いますが、最初は病院を受診されることをお勧めします。

 

 

後遺障害に認定される可能性がある

追突事故で、骨折や脱臼、半月板損傷、肩腱板損傷などの重傷を負った場合はもちろんのこと、むちうち、捻挫等の場合にも後遺障害に認定される可能性があります。

むちうちや捻挫で認定される可能性がある等級は14級9号です。

14級9号の認定は、治療期間・頻度、治療内容、症状の一貫性・連続性、事故規模・態様、画像所見の有無、神経学的検査の結果などの考慮要素を総合考慮して判断されることになります。

特に、通院期間や通院頻度は重要な考慮要素となるため、医師の指示に従って、しっかり治療すべきです。

すぐにご自身の慰謝料、休業損害、逸失利益の概算額を知りたいという方は、こちらのページをご覧ください。

 

 

示談する場合には、弁護士に示談内容を見てもらう

治療が終了した後、あるいは、治療を終了して後遺障害の結果が出た後に保険会社から示談金の提示がなされます。

保険会社は、早く示談してもらうために、提示内容が妥当であるかのように説明するでしょう。

しかし、それを鵜呑みにしてはいけません。

保険会社も営利会社なので、出来る限り賠償金を抑えたいのが心情です。

したがって、最初の提示で妥当な金額を提示してくる可能性は極めて低いでしょう。

例えば、慰謝料の算定基準は、①自賠責保険基準、②任意保険会社基準、③裁判基準の3つの基準があり、①<②<③の順番で金額が高くなります。

保険会社が、最初に提示してくる基準は、①あるいは②のいずれかであり、裁判基準で提示してくることはまずありません。

保険会社が提示している金額が、いずれの基準で算定されたものなのか判断するのは難しいため、保険会社から賠償の提示があった場合には、弁護士に提示内容を見てもらうことをお勧めします。

 

 

まとめ

追突事故に遭った場合には、こうしたポイントを踏まえて適切な補償を受けられてください。

追突事故の被害者が知っておくべきポイント

  1. ① 原則として、被害者の過失割合は0%
  2. ② 示談交渉は自分で行うか、弁護士に依頼する必要がある
  3. ③ 痛みがある場合には、必ず病院に行く
  4. ④ 後遺障害に認定されることもある
  5. ⑤ 示談する場合には、弁護士に示談内容を見てもらう

 

 

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