「むちうち」にも種類があるの?【弁護士が解説】
むちうちには、頸椎捻挫型、神経根型、バレー・リュー症状型、脊髄症状型といった種類があります。
「むちうち」とは
「むちうち」とは、簡単に言うと、事故により鞭を打つように頸部が伸びたり曲ったりすることで生じた損傷の総称です。
難しい言葉でいうと「骨折や脱臼のない頸部脊柱の軟部支持組織(靭帯・椎間板・関節包・頸部筋群の筋、筋膜)の損傷」と説明されています。
医師の診断書で記載される診断名としては、「頸椎捻挫」「外傷性頸部症候群」「外傷性頸椎症」などと記載されることが多いので、これらの傷病名の診断を受けている場合には、上記のいわゆる「むちうち」という風に考えられて構いません。
「むちうち」は厳密にはいくつかの類型に分類されており、主には下記の4つに分類されています。
以下では、それぞれについて説明します。
①頸椎捻挫型
この型がむちうちの75%を占めるといわれています。
主な症状としては、頸部の痛みや運動制限や運動痛などです。
痛みや痺れなどの神経症状があったとしても部分的で、一時の時間の経過で治癒することが多いと言われています。
治療を継続すれば、経過良好となり、多くの場合が1ヶ月半から3ヶ月程度以内に治癒すると言われています。
そのため、加害者側(保険会社など)は、むちうちなら長くても3ヶ月程度で治癒するという前提の下に示談交渉に臨んでくることが多いのです。
もっとも、頸椎捻挫型の方でも3ヶ月以上の治療を要する方はいますので、加害者側(保険会社など)の話を鵜呑みにして3か月以内に治療を止めなければならないということは全くありません。
十分に主治医の先生と相談した上で症状固定の時期を決めるべきです。
②神経根型
神経根型の症状は、知覚障害や放散痛(病気の原因部位とまったくかけ離れた部位に現れる痛み)などが生じます。
原因としては、事故等により椎間板を損傷することで椎間板が突出し、神経根を圧迫すること等から痛みや神経症状を発症します。
この場合、頸椎捻挫型に比べ治療が長期化する傾向にあります。
③バレー・リュー症状型
バレー・リュー症状型の主な症状としては、頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気、視力・聴力の低下といった症状を発症します。
バレー・リュー症候群はその発生原因に不明な点があり、発生機序(発症するまでの仕組み)についても明確には判明していません。
心因的な要素(精神的なもの)が原因になっているとも考えられています。
したがって、医学的にバレー・リュー症候群を立証するのは容易ではありません。
④脊髄症状型
脊髄症状型は、背骨のなかの脊髄(脳と体の各部位をつなぐ連絡網)を損傷することで、手足に痺れや知覚障害、麻痺などが生じるものです。
脊柱管狭窄症(脊髄を守っている管が狭くなっている病気)や後縦靭帯骨化症(背骨の周囲の靭帯が骨になってしまい脊柱管が狭くなる病気)の人は、一般人に比べて外部からの衝撃を受けることで脊髄損傷が生じる可能性が高まります。
脊髄が損傷しているかどうかの確認は、MRIやレントゲンで行います。
なお、脊髄症状型は、今日においては、脊髄損傷として考えられており、むち打ち症の一部としては含まれないと考えられています。
後遺障害の可能性
交通事故により、むちうち損傷した結果、痛みが残ってしまった場合には、後遺障害認定の可能性があります。
認定される可能性がある等級は14級9号、12級13号です。
14級9号は、「局部に神経症状を残すもの」に該当する場合に認定がなされます。
具体的には、事故の規模・態様、治療の内容・頻度、通院期間、症状の一貫性・連続性、画像所見、神経学的検査の結果といった諸事情を踏まえて、交通事故による痛み等の神経症状が残存していることについて医学的に説明できる場合に認定されます。
12級13号は、「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当する場合に認定されます。
14級9号との違いは、「頑固な」という文言の有無ですが、具体的には、14級9号は、事故による症状の残存を医学的に説明できればよいのに対して、12級13号は、医学的に証明できなければなりません。
事故による症状の残存を、医学的に証明するためには、画像所見が必須となります。
画像所見が認められ、その所見が神経学的検査とも整合的である場合などに認定されることになりますが、むちうち損傷で12級13号が認定されることはそれほど多くはありません。