むちうちで後遺症の認定される?【弁護士が解説】
むちうちの場合、14級9号あるいは12級13号に認定される可能性があります。
むちうちとは
交通事故の事故態様のうち、最も多いのが追突事故です。
追突事故の場合には、後ろからの不意打ちの衝撃が被害者に加わり、首が大きく前後に振られ、むちうちになることが比較的多くあります。
むちうちは、医学的な傷病名ではなく、病院が作成する診断書には、頚椎捻挫や外傷性頚部症候群といった形で診断がされ、記録されています。
むちうちは、骨折や脱臼などの所見がないため、「捻挫」や「症候群」(症状の総称)といった診断になるのです。
むちうちにも種類があり、①頸椎捻挫型、②神経根型、③バレー・リュー症状型、④脊髄症状型といったものがあります。
詳しくはこちらをご覧ください。
こうしたむちうちでは首から肩にかけての痛みが主な症状として生じます。
そして、こうした症状が治療をしても完全には治らずに残ってしまうということもあります。
むちうちと後遺障害
その場合に、交通事故によるむちうちの後遺症について、自賠責保険における後遺障害の申請を検討することになります。
実は、骨折や脱臼などがなく、頚椎捻挫(むちうち)のみの場合においても後遺障害が認定されることはあります。
具体的にいいますと、後遺障害のうち、12級13号あるいは14級9号に該当する可能性があります。
- 12級13号
「局部に頑固な神経症状を残すもの」 -
- 14級9号
「局部に神経症状を残すもの」
両者の違いは、文言としては「頑固な」という言葉があるかないかです。
当事務所に依頼されて、むちうちで後遺症が認められた事例
受傷部位:首(外傷性頸部症候群)、腰(腰部挫傷)
等級:併合14級
事故概要:渋滞した道路で停止中に、後続車両からノーブレーキで衝突される事故
損害項目 | 保険会社提示額 | 弁護士介入後 |
---|---|---|
傷害慰謝料 | 60万円 | 109万円(裁判基準 通院9か月) |
後遺障害慰謝料 | 75万円(自賠責限度額) | 110万円(14級 裁判基準) |
後遺障害逸失利益 | 約70万円(5年間分) | |
結果 | – | 約160万円増額 |
そのほか「むちうち」の方の解決事例は、こちらをご覧ください。
14級9号と12級13号の違い
上記のとおり、むちうちの場合には、後遺障害としては12級13号と14級9号のどちらかの可能性があります。
後遺障害の認定にあたり12級13号と14級9号の分かれ目はどのように判断するのかというと、自賠責保険の実務では、12級13号に該当するには「障害の存在が医学的に証明可能なもの」である必要があり、14級9号に該当するには「障害の存在が医学的に説明可能なもの」であることが必要といわれています。
ここでの違いは、「証明」と「説明」です。
どちらも似たような意味に捉えられますが、12級13号に要求される医学的な証明とは、他覚的な所見が存在することを意味しています。
むちうちで他覚的所見があるという場合としては、画像診断で神経を圧迫している所見が認められる場合で神経学的な検査で明らかに異常な所見が認められる場合です。
具体的には、まず、首のMRIの画像で、神経が圧迫されていることが認められることが必要です。
また、神経学的な検査とは、腱反射テストや筋萎縮検査が挙げられます。
こうした検査で反射の異常や筋萎縮が生じているかどうかが重要なポイントになります。
その際、画像にて神経の圧迫が認められるものの、神経学的検査では、画像上で圧迫されている部分が支配する領域とは異なる領域に異常が出るなど、画像所見と神経学的検査が整合しないような場合には、医学的証明まで認められないとして12級13号に認定されない可能性もあります。
他方で、14級9号は、事故の規模・態様、治療内容・頻度、通院期間、症状の連続性・一貫性、画像所見、神経学的検査の結果などの諸事情を踏まえて、交通事故による現在の症状が今後も残存する症状として説明可能である場合に認定されます。
統計的には、14級9号の割合が圧倒的に多いのが現状で、むちうちで12級13号が認められるのは非常に少ない状況です。
ここまで説明してきたように、単に痛みがあるからという理由で、全ての事案で自賠責保険の後遺障害として認定されるわけではなく、自覚症状のみで上記の受傷状況や症状・治療経過・臨床所見などから医学的に説明ができない、合理的なものとはいえない場合については14級9号も認定されないことになってしまいます。
したがって、むちうちでも後遺障害が認められることがあることを十分に押さえた上で、適切な等級が認定されるように、適切な資料を揃えることが大切になります。
関連動画