交通事故で膝蓋骨骨折。後遺障害に認定されますか?
膝蓋骨(しつがいこつ)とは、膝関節にある膝の皿の骨折です。
膝関節の怪我ですから、膝の機能障害が残存した場合に後遺障害として認定される可能性があります。
膝関節の可動域に制限が残存した場合、10級11号または12級7号、
骨折した膝蓋骨に痛みが残存した場合、12級13号または14級9号に該当する可能性があります。
目次
膝蓋骨骨折とは
膝蓋骨とは膝の皿のことです。
手で膝の部分を触れば、固い部分があるのがわかります。
この部分が膝蓋骨になります。
ちなみに、「蓋骨」の「蓋」(がい)という字は「ふた」という意味です。
膝を動かすと膝蓋骨は上下に動きます。
膝蓋骨が上下に動くのは、膝を伸ばす太ももの筋肉が大腿骨に擦られ、腱が切れるのを防ぐ役割をしているからです。
したがって、膝蓋骨を骨折すると、膝の曲げ伸ばしで痛みを伴うことが多くあります。
交通事故により膝蓋骨を骨折すると、膝関節に痛み、腫れが生じたり、膝を自分で動かせなくなります。
骨折をしているので、治療としては、ギプスによる固定や手術による固定が行われています。
膝蓋骨骨折で後遺障害14級に認定された事例はこちらをご覧ください。
膝蓋骨骨折の発生原因
交通事故の場合、歩行者で自動車にひかれてしまい転倒した際に、膝を地面で打った場合や追突事故の衝撃で、ダッシュボードに膝をぶつけてしまった場合などに膝蓋骨を骨折することがあります。
膝蓋骨の骨折が起こる交通事故では、膝にある靭帯や半月板も合わせて損傷や断裂してしまうこともあります。
膝蓋骨骨折の症状
当然ですが、骨折した膝の部分に強い痛みを訴えます。
また、立ち上がったり、自分で膝を曲げたりすることができなくなります。
さらに、時間が経つと膝関節に血液が溜まり、膝が腫れてくることもあります。
膝蓋骨骨折の後遺障害
膝蓋骨は膝関節の可動域制限を伴う骨折のため、膝関節の可動域に制限が残存する可能性があります。
膝関節の可動域に制限が残存した場合、以下に該当する可能性があります。
- 10級11号
健側(怪我をしていない側の膝関節)と比べ1/2以下制限される - 12級7号
健側(怪我をしていない側の膝関節)と比べ3/4以下制限される
また、骨折した膝蓋骨に痛みが残存したとき、神経系統の障害が残存したとして、12級13号または14級9号に該当する可能性があります。
12級13号か14級9号かの違いは、骨折した膝蓋骨が転位なく骨癒合できているかどうか、関節面に不整面が認められるかの違いです。
したがって、症状固定時点で再度レントゲンを撮影しておく必要があります。
交通事故による膝蓋骨骨折の注意点
このように、交通事故により膝蓋骨骨折のけがをすると、後遺障害が認定される可能性があります。
膝蓋骨骨折で気をつけるべき注意点は、以下のようなものが挙げられます。
休業損害を漏れなく請求する
膝蓋骨の骨折は下半身の骨折で、ケースによっては思うように歩けないということもあります。
このとき、事務仕事であれば、なんとか就労することも可能かもしれませんが、運送業や建築業といった体を使う仕事を行うことは困難なことが多いはずです。
有給休暇を使用することで、給料を会社から受け取ることは可能ですが、その分有給休暇は減ってしまいます。
そこで、有給休暇を使用した場合には、会社から休業損害証明書を作成してもらうことで、漏れなく請求しておくことが大切です。
後遺障害の認定をきちんと受ける
膝蓋骨骨折のけがは、治療を一定期間行っても症状が完治せず、後遺症が残ることもあります。
このとき、被害者の方の後遺症を保険会社に補償してもらうためには、後遺障害の認定をきちんと受けなければなりません。
この認定が得られていないとたとえ痛みが残っていたとしても、後遺障害の補償である後遺障害慰謝料と逸失利益を認めてもらうことはできないのです。
そして、この後遺障害の認定を受ける前提として、いつを症状固定の時期とするのかという点もポイントになります。
主治医と面談を通じて治療方針や内容を確認し、被害者自身の症状の推移を過不足なく話しておくことが必要です。
逸失利益の喪失期間をチェックする
膝蓋骨骨折の後遺障害については、機能障害と神経障害の2つの類型が考えられます。
この2つの類型では、12級7号と12級13号という同じ等級が認められる可能性がありますが、この2つのどちらが認められるかによって、逸失利益の喪失期間に差が生じることがあります。
すなわち、可動域制限による12級7号の場合には、原則である67歳までを喪失期間とすることが多いのですが、痛みによる12級13号の場合には、痛みは徐々に慣れることで、影響は小さくなるとして、補償期間が10年程度に制限されるというケースが多くあります。
したがって、被害者の方が認められた等級が単に何級かというだけでなく、どのような内容の後遺障害かを確認し、その上で保険会社から提示される逸失利益の計算根拠をチェックし、どの程度の補償となっているかを精査しなければなりません。
こうした作業は、被害者の方が自分で行うのは難しいこともありますので、専門家である弁護士に相談して、保険会社からの示談案を見てもらう方がよいでしょう。
異議申立てで12級の後遺障害が認定された事例はこちらをご覧ください。