よくある相談Q&A

事故で事業所得者・会社役員が死亡した場合の逸失利益の算定方法は?

執筆者
弁護士 鈴木啓太

弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

所属 / 福岡県弁護士会

保有資格 / 弁護士


弁護士の回答

以下の式で計算します。

死亡による逸失利益の計算式 年金収入の場合

基礎収入額 ×( 1 - 生活費控除率 )× 就労可能年数に対応するライプニッツ係数 = 死亡による逸失利益

 

基礎収入額

事業所得者の基礎収入

確定申告原則として、事故前年の確定申告所得額が基礎となります。

所得の変動が大きい場合は、事故前の数年の所得の平均額が基礎となることもあります。

立証資料としては、確定申告書及びその添付書類(白色申告者の場合は収支内訳書、青色申告者の場合は所得税青色申告決算書)の控えです。

節税にためなど実際に申告した所得額と実収入に差がある場合は、実収入を立証することが必要です。

立証資料は、会計帳簿、日計帳、伝票類、レジの控え等の証拠が必要となり、厳格な立証が求められています。

経費の立証については、業種別の利益率が掲載されている総務省統計局編の個人企業経済調査年報や、国税局の業種別所得税がわかる標準所得率表などを用いて、経費率が認定されることもあります。

家族経営の場合は、所得に対する本人の寄与の割合によって算定されることになります(最判S43.8.2)。

判例 本人の寄与の割合に関する裁判例

郵便局長兼農業従事者の男性(56歳)が事故により死亡した事例


農業収入について、135万2550円であったところ、被害者は、妻とともに農業に従事していたことから、被害者の寄与度は概ね50%だとして、基礎収入を上記金額の50%と認定しました。

【神戸地判H10.11.5】

確定申告を全くしていない場合や実際の収入が平均賃金以下である場合、平均賃金が得られる蓋然性が認められれば、賃金センサスの平均賃金などを参考に基礎収入額を定める例が多いです。

平均賃金が得られる蓋然性が認められるかは、被害者の年齢、性別、職業、学歴、営業の状況、事故前の現実収入などの事情を総合考慮して判断されます。

 

会社役員の基礎収入

×のカードを出す男性のイメージイラスト会社役員は、役員報酬につき、労務提供の対価部分は認められますが、利益配当の実質を持つ部分は、基礎収入とは認められません(大阪地判H4.9.21)。

労務提供の対価といえるかどうかは、当該役員の地位、職務内容、役員の報酬の額、会社の利益状況等を総合考慮して判断されます。

 

 

生活費控除率

葬儀のイメージ画像被害者が不幸にも死亡してしまった場合、生活費は発生しなくなります。

逸失利益の算定にあたっては、生活費分を控除します。

生活控除率は、家族関係、性別、年齢に照らして下の割合となります。

被害者の立場 生活費控除率
一家の支柱 被扶養者が1名 40%
被扶養者が2名以上 30%
男性(独身、幼児等含む) 50%
女性(主婦、独身、幼児等含む) 30%

 

 

就労可能年数

就労可能年数は原則67歳-死亡時年齢です。

67歳を超える方の場合は、簡易生命表の平均余命の2分の1が就労可能年数となります。

 

就労可能年数に対応するライプニッツ係数

給料が減る就労年数に対応するライプニッツ係数を乗じるのは、中間利息を控除するためです。

なお、民法改正の影響で、令和2年3月31日までの事故と、令和2年4月1日以降の事故では、用いるライプニッツ係数が異なります。

 

 

事業所得者の逸失利益の計算例

具体例① 自由業37歳の場合

  • 基礎収入:所得税申告額900万円
  • 生活費控除率:30%(扶養家族 妻、未成年の子1名)
  • 就業可能年数:67歳-37歳=30年
  • ライプニッツ係数:
    令和2年3月31日までに発生した事故の場合(15.372)
    令和2年4月1日以降に発生した事故の場合(19.600)

以下が、逸失利益になります。

【令和2年3月31日までに発生した事故の場合】900万円 ×(1 − 0.3)× 15.372 ¬= 9684万3600円

【令和2年4月1日以降に発生した事故の場合】900万円 ×(1 − 0.3)׬ 19.600 = 1億2348万円

具体例② 夫婦で飲食店を経営している夫51歳が死亡した場合

  • 基礎収入:所得税申告額650万円
  • 本人の寄与率:70%
  • 生活費控除率:30%(扶養家族 妻1名)
  • 就業可能年数:67歳-51歳=16年
  • ライプニッツ係数:
    令和2年3月31日までに発生した事故の場合(10.838)
    令和2年4月1日以降に発生した事故の場合(12.561)

以下が、逸失利益となります。

【令和2年3月31日までに発生した事故の場合】650万円 × 0.7(寄与率)×(1 − 0.3)× 10.838 = 3451万9030円

【令和2年4月1日以降に発生した事故の場合】650万円 × 0.7(寄与率)×(1 − 0.3)× 12.561 = 4000万6785円

このように逸失利益の算定には複雑な問題が多く含まれています。

専門家である弁護士に相談することをお勧めします。

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執筆者
弁護士 鈴木啓太

弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

所属 / 福岡県弁護士会

保有資格 / 弁護士

専門領域 / 個人分野:交通事故を中心とした人身障害事件 法人分野:労働問題  

実績紹介 / 交通事故の相談件数年間300件超え(2019年)を誇るデイライト法律事務所のパートナー弁護士。交通事故分野において、他士業や整骨院、一般市民向けのセミナー講師も務めた。



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